2018-01-01から1年間の記事一覧

法の下の冷酷

おれは今上天皇と面識がなく、直接話をうかがったわけではないが(当たり前である)、天皇、あるいは皇族であることは随分と不自由な身の上であろうと思う。 前にも書いたが、たとえば、天皇は自分名義のクレジットカードもつくれなければ、ECサイトで物を買…

ケツをまくる

「ケツまくって逃げる」という言い回しがある。江戸時代の町人が、走るとき、着物を尻からげにしたところから来た表現なのだろう。 洋装が普通になった現代では、なかなか実行しにくい格好である。 男がケツをまくって逃げようとするとズボンをおろさねばな…

人間の構成

おれは過敏性腸症候群とアトピーを患っていて、どちらもなかなか思いにまかせぬものである。過敏性腸症候群は自律神経系統の、アトピーはもっぱら免疫系統の不調から来る。おれの一生は腹痛と痒みとの戦いであると言っても過言ではない。いわゆるQOLのかなり…

大阪弁を翻訳する

昔、ひさうちみちおの漫画に大阪弁を東京言葉に変えるというのがあって、大笑いした覚えがある。たとえば、映画の喧嘩のシーンでよく出てくる「お前ら、なんぼのモンじゃい!」を東京言葉に直すと「君たち、いくらのものなんだい?」になるんだそうだ。 テレ…

相撲マフィア

大相撲で感心するのは、数年ごとに大騒ぎを起こしては沈静化し、忘れた頃にまた大騒ぎを起こすことだ。 日馬富士の貴ノ岩への暴行事件に端を発し、貴乃花が日本相撲協会を退職するまでの流れはある意味、見事だった。あれよあれよ、という間に思いがけぬ方向…

人間相対性理論

人の悪口を言うのは楽しい。古今亭志ん朝も「人の悪口を言いながら酒を飲むほど楽しいことはありませんナ」と言っている。 しかしーーこれをお読みの方の周囲にもいると思うのだがーーやたらと悪口を言う人もいて、げんなりすることがある。手当たり次第とい…

だけ派の人々

誰が書いていたのか忘れたが、おれの好きな話にこんなのがある。 その人が「複雑系とは何なのだ。単純に言ってくれ」と知人に訊ねたら、「まあ、単純に言うと物事は複雑だ、ということだ」と答えたという。 世の中のいろんな事柄というのはたいがい複雑なも…

クロサワランド

ふと出来心でディズニー映画の「パイレーツ・オブ・カリビアン」の二作目を見た。半分くらいまで頑張ったがついにノレず、見るのをやめてしまった。 おれはディズニー映画と相性が悪く、あまり面白いと思ったことがない。冒頭の、ディズニーランドのお城みた…

デブの未来

ここまで三週にわたってデブについて書いてきた。一回目はデブの基礎知識、二回目はデブの美的側面からの考察、三回目はデブと神経科学がテーマであった。最終回となる今回は生物史、人類史をふりかえりつつ、デブの未来像について書きたいと思う。なお、約…

デブを神経科学から考える

デブ化について続けて書く。なお、このシリーズは四部構成で考えていて、その第三回にあたる。 おれのデブ化が進んで、はた目にもそれとわかるほど腹がせり出してくると(まるで道ならぬ恋をした姫である)、人がいろいろとアドバイスをくれる。その中に「食…

デブの美的価値を考える

おれがデブ化しつつあるということからの考察。前回からの続き。今回はデブを美的側面から捉えてみたいと思う。 現代ではデブがネガティブに捉えられることが多い。「デブのくせに」という陰口には有無を言わさぬ、言い換えれば論理と倫理を超えたパワーがあ…

デブと代謝

おれはこの春くらいからどんどんデブになっていて、半径10メートル以内ではなかなかの話題である。 なぜデブになるかというと、割と単純な理屈で: 摂取エネルギー − 消費エネルギー = デブ化エネルギー ということである。摂取エネルギーが多くて消費エネル…

アンドロイドは電気太夫の義太夫を聴くか

「人間とは何か?」というのは古来関心を集めてきた問題であるらしい。「あるらしい」と書いたのは、おれが馬鹿なうえにあんまり知識がないからだ。 馬鹿なりに面白いなあ、と思うことがある。たいがい、人間論というのはその時代の科学技術の傾向に影響を受…

あなたにとって何ですか?

テレビのドキュメンタリー番組や雑誌のインタビューなどでしばしば見かける質問に「あなたにとって◯◯とは何ですか?」というものがある。 これがおれには昔から解せない。質問するほうも質問するほうだが、答えるほうもよく答えられるものだと思う。 たとえ…

デジタル・ネイティブの衝撃

五歳になるおれの甥は(おれが五歳という意味ではない)二、三歳の頃から親のスマホやお姉ちゃんたち(十歳ほど違う)のタブレットをおもちゃにして成長してきた。子供の頃からデジタル環境が整っている人々、いわゆるデジタル・ネイティブである。 iPhoneに…

歴史をストーリーで語ること

今を去ること三十年も前になるが、おれは大学時代、文化人類学というコースに所属していた。文化人類学の大きなテーマのひとつに神話があり、おれは自分でコースを選択しておきながら、「なんでこんな浮世離れしたことを研究するのかなー」などと鼻くそをほ…

実家

ふと気になった。日常会話でごく普通に使っているんだが、日本語では親の住む家のことを「実家」と呼ぶ。文字通りに捉えれば「実の家」であって、それでは実家に対して自分が今住んでいるところは「仮家」なのだろうか。 おれの場合、富山で生まれ育って、数…

牛乳と牛

お米や野菜などで、生産者と消費者が直接つながる形がある。「どこそこの誰それ」が作ったお米、野菜と知ったうえで定期的に購入する。農家からのおたよりが来たり、時には購入者がその農家に遊びに行ったりすることもあるらしい。親戚が送ってくれるお米や…

サマータイムを導入するくらいなら

おれは世間の動きにうとくて、つい先日、2020年のオリンピックが東京で開催されることを知って腰を抜かしたくらいである。嘘である。 そんな具合だから、サマータイム制の導入がここのところ話題になっていることはうすうすと聞いてはいるが、誰がどのくらい…

恋のダイエット

相変わらずダイエット業界方面は活発なようである。一発当てればかなり儲かるのであろう。 おれにもひとつアイデアがある。昔から「身も細るような恋」という。この頃は恋というのは楽しいもの、ウレシハズカシなもの、という捉え方が多いようだが、どっこい…

デュシャンは語る

デュシャンは語る (ちくま学芸文庫)作者: マルセルデュシャン,ピエールカバンヌ,Marcel Duchamp,Pierre Cabanne,岩佐鉄男,小林康夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1999/05/01メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 44回この商品を含むブログ (50件) を見る …

ことわざの生命

「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざがあって、なかなかに奇妙である。 ことわざというのは一般に、世の中の仕組みや機微、あるいは人情の妙などを短い、しばしば奇抜なフレーズで納得させる。意味と表現のからみあいが卓抜なことわざは人口に膾炙し、後…

大会テーマソング

今回のサッカー・ワールドカップは試合が深夜におよぶので、平日はなかなか見れなかった。それでも試合には面白いものが結構あった。 一方、相変わらず謎なのがテレビ放送の「大会テーマソング」というやつで、安いJポップが付いてくる。番組制作側の安いセ…

相撲源氏

理由は知らないが、大相撲の部屋には井筒、尾車、片男波、高砂など、雅な名前が多い。その部屋の師匠の顔は: だったりするのだが、ともあれ、名前は雅なのである。 雅といえば源氏物語の巻名がそうで、では、源氏物語に相撲部屋を紛れ込ませるとどうなるで…

知ってるつもり

知ってるつもり――無知の科学作者: スティーブンスローマン,フィリップファーンバック,橘玲,土方奈美出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/04/04メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る たまたま手にした本だったが、良書だっ…

ヘアーとすっぴん

先日も書いたように、最近、頭の後ろと横を上まで刈り上げている。 前に刈り上げてから二週間が経ち、髪が伸びてきた。 普段は整髪料で無理矢理に形をつけているのだが、シャワーを浴びて髪を乾かすと、一本一本の毛が立ち上がってなかなか盛大である。一番…

サバ食うべきか、食わざるべきか

おれは小太りになってしまった。 二十代前半の頃の体重は五十キロ台前半で、身長は168cmだから(今も変わらない)、その頃は中肉中背か、むしろ痩せたほうだったろう。それが今は七十キロだから、四半世紀の間に二十キロ近く太ったことになる。運動なんぞし…

ヘアー

ゴールデンウィーク頃から口髭を伸ばし始め、三週間前に髪を思い切って短くした。 毒にも薬にもならないような普通の髪型が疑問に思えてきたので、床屋のマスターと相談しながら髪を切っていった。 「思い切って短くしてよ」 「こんな感じスかねー」 (メガ…

京都人のA.I.

シンギュラリティと呼ぶらしいのだが、人工知能の知的能力が人間を超える日のことだ。SFで昔から描かれてきたテーマだが、どうやら現実的になってきているらしい。 A.I.が人間に代わって応対することは基本的な受け答えなら実現している。それでふと思いつい…

物忘れ

おれも生きている時間がだいぶ長くなってきて、このところ、老化現象に悩まされている。 ……などとゆるい慣用句として「悩まされている」と書いてしまったが、本当のところは悩んではいない。運動能力はもともと笑ってしまうほど低いし、体の代謝機能が衰えて…