法の下の冷酷

 おれは今上天皇と面識がなく、直接話をうかがったわけではないが(当たり前である)、天皇、あるいは皇族であることは随分と不自由な身の上であろうと思う。

 前にも書いたが、たとえば、天皇は自分名義のクレジットカードもつくれなければ、ECサイトで物を買うこともできない。もし買おうと思ったら、会員登録のときに「姓:天皇」「名:明仁」「First Name: Akihito」「Family Name: Emperor」などと書かねばならず、個人情報もビックリである。そもそも選挙権すらない。

 天皇の地位というのは憲法皇室典範で決められていて、ある意味、日本国民(なのかどうかも曖昧だが)の中でこれほど人権が制限されている方も珍しいのではないかと思う。そして、その不自由、不都合をおれも含めて多くの人が当然か、自分には関係のないことか、仕方のないこととして等閑視している。

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 その不自由、不都合は自分自身の身に置き換えて想像してみるとわかると思う。試しに、日本国憲法の条文の中の「天皇」を「あなた」と書き換えてみよう。

日本国憲法

 

第1章 あなた

  • 第1条 あなたは、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
  • 第2条 あなたの地位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
  • 第3条 あなたの国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
  • 第4条 あなたは、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
     あなたは、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
  • 第5条 皇室典範の定めるところにより、摂政を置くときは、摂政は、あなたの名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
  • 第6条 あなたは、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
     あなたは、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
  • 第7条 あなたは、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
     1 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
     2 国会を召集すること。
     3 衆議院を解散すること。
     4 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
     5 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
     6 大赦、特赦、減刑刑の執行の免除及び復権を認証すること。
     7 栄典を授与すること。
     8 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
     9 外国の大使及び公使を接受すること。
    10 儀式を行ふこと。
  • 第8条 あなたに財産を譲り渡し、又はあなたの家が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。

 おれなら、ヤダネ、ゴメンコームルヨ、とケツをまくりたくなるところだ。

 日本国憲法の別の条文を見てみよう。天皇および後続の立場から見てみれば、随分、皮肉である。

  • 第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
  • 第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
  • 第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
  • 第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。