ヘアーとすっぴん

 先日も書いたように、最近、頭の後ろと横を上まで刈り上げている。

 前に刈り上げてから二週間が経ち、髪が伸びてきた。

 普段は整髪料で無理矢理に形をつけているのだが、シャワーを浴びて髪を乾かすと、一本一本の毛が立ち上がってなかなか盛大である。一番似ているのはタワシだが、勢いも含めて表現するなら、夏、伸び盛りの川原の雑草か、あるいは手品師がポン、と飛び出させる花束かもしれない。

 鏡を見ながら、「ああ、女性にとってのすっぴんってこういうことなのだなあ」と思った。

 二十代以上になると、日本の女性の多くはすっぴんをあまり見せたがらなくなる。家族など、心を許せるというか、物理的に見せざるを得ない相手以外にはすっぴんを恥ずかしがる人が多い。

 おれは化粧をしたことがなく、また、一般に男は化粧をせずともよい、とされる文化のなかで生きてきたから、化粧とすっぴんをめぐる女性の心理というものを実感したことがなかった。なるほど、こういうことであったか。

 そして、鏡の中の雑草の大群を眺めながら、「『本当の自分』とは、整髪料で髪を整えたおれだろうか、伸びるがままのおれだろうか?」と考えたのであった。

 同じ伝で、化粧(化けて粧う、と書く)に長けた敬愛する女性の皆様方よ、「本当の自分」とやらは、化粧をしたあなただろうか、すっぴんのあなただろうか?