サマータイムを導入するくらいなら

 おれは世間の動きにうとくて、つい先日、2020年のオリンピックが東京で開催されることを知って腰を抜かしたくらいである。嘘である。

 そんな具合だから、サマータイム制の導入がここのところ話題になっていることはうすうすと聞いてはいるが、誰がどのくらい本気で考えているのかは知らない。まあ、昔からちょいちょいとは持ち上がって立ち消えになっている制度であって、おそらく今回も夏の暑さとともにフェイドアウトしていくのだろう。ちらりと漏れ聞くように、東京オリンピックのためというのなら、たかだか二週間の興行のために馬鹿馬鹿しい。

 どうしてもというのなら、サマータイム制よりシエスタを導入したほうがいいんじゃないかと思う。ご存知の通り、スペイン伝統の長い昼休みである(昼寝とは限らないそうだ)。今年の七月後半から八月前半は大変な暑さであったから、企業などで通常一時間の昼休みを二時間の昼休みにするのも悪くないと思う。在社時間が長くなるが、家に帰ってめいめいがエアコンを使うよりは会社でエアコンを使ったほうがエネルギー消費量もトータルでは少なくなるんではないか。例の興行も、一番暑い時間帯をぼうっと過ごして、午前と夕方以降に動いたほうがいいんじゃないかと思う。

 もっとも、我がニッポン民族はコマネズミのごとくセコ素早い民族であるからして、シエスタの二時間を我慢できるとは思えないが。

 サマータイムシエスタより、怠け者のおれとしてはスプリングタイム制を導入してもらいたいと思う。「春眠暁を覚えず」というように何せい、春の朝は眠たいから、一時間余計に眠らせてもらうのだ。これこそ、文化、風情というものだと思うが、セコ素早さを尊しとするこ真面目な人が多いから、無理だろうなあ。