高層マンションと掛け布団

 電車に乗ると、最近、東京近辺のあちこちで高層マンションが建っているのに気づく。40階くらいある。


 5、6年前はそれほどなかったと思うのだが、何か技術か制度のブレイクスルーでもあったのか、それとも、計画自体は以前からあり、金融危機や何かのあおりでストップしていたのが再開したということなのか。


 あれ、大地震のときはどうなるのかなあ、と思う。


 もちろん、簡単に倒壊することはないのだろう。また、非常設備の類もきちんと設けてあるはずだ。でなければ、建設許可は下りないと思う。


 しかし、大地震に遭ったときの人間の心理のほうはどうなのだろう。冷静に避難できるのだろうか。


 風が強い日はベランダに出られない、布団なんぞ干せない、とも聞く。


 たぶん、管理者側が布団を干させないとは思うが、子どもが寝小便か何かして、うっかり干したらどうなるのだろう。


 天気がいいので、布団を干す。
 だんだん風が吹いてきたが、窓を閉めてしまうと気づかない。ふとベランダに目をやると、あや。


 あっという間に、飛んでいく掛け布団。


 風に煽られ、ゆっくりと回りながら、空中を舞う。紅地にピンクの牡丹の模様。布団カバーのレースがどこか、哀しくも優雅だ。


 地上40階から掛け布団が落ちてきた場合、下の人間はどうなるのか。


 ガリレオも、ピサの斜塔から鉄の球なんぞ落っことさずに、掛け布団と座布団で実験しといてくれればよかったのに。

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「今日の嘘八百」


嘘七百六十九 あまり高いところに住むのも、トンビに失礼だろう。