クリスマスと多神教

 街ではそろそろクリスマスの飾り付けが始まっている。

 まだ1ヶ月も先なのに気の早いことだと思うが、夜の街にクリスマスの華やかなイメージが合っていて、「気分」を楽しみたいということなのだろう。多くの日本人にとってクリスマスはあくまで「気分」である。

 おれは以前からキリスト教徒でない人間がクリスマスを祝うことに疑問を持っていて、信じてもいないものを祝うのはむしろ失礼なんじゃないかと思っていた。

 しかし、この頃では日本人の多くは多神教徒であって、クリスマスもイエスなりキリストなりという神様のひとりを祝うイベントなのだと考えるようになった。正月には神社で神様に挨拶し、クリスマスにはイエスなりキリストなりを祝い(もっとも気分を味わいたいだけの人も多いだろうが)、葬式や法事では仏様にお経を読む。お地蔵様にはぺこりと頭を下げ、八幡様やお稲荷さんに願い事をし、結婚式はカッコいいので教会であげる。とまあ、そんなふうなのだ。

 日本は昔からアニミズムの国で、あらゆるところに神様がいると考えてきた。中国経由でインドから入ってきた如来や菩薩、四天王なんかも多くの神様のなかに組み込まれた。キリストもそのひとりなのだろう。

 日本人は無宗教だと言われるけれども、そうではないと思う。日本人の多くは多神教なのだ。ただ、神様それぞれについて深く考えることはしない人が多いのだろう。キリスト教の神様が「この世に神はわししかおらんのだ」と主張していたとしても、そんなことは気にかけない。いろいろいる神様のひとりくらいにしか考えていない。そのときその場で目の前にいる神様を信じる。そういう人が多いのだろうと思う。教義より神様それぞれのイメージやイベントの気分が大事なのだろう。

おれはメリークリスマスなんて言わないけどね。