小津安二郎「お早よう」を見る

 

 小津安二郎の「お早よう」を見た。見るのは初めてである。

 郊外の住宅地が舞台である。戦後の同じかたちをした安普請の建売が並ぶ。そこに住む人々の人間模様が描かれる。

 テレビがほしいと駄々をこねる兄弟がだんまり作戦を続ける、というのが一応、中心になるストーリーだが、いろんな小さなエピソードがからむ。脚本が見事だ。小さな誤解と手違いからあらぬ噂がご近所で広まっていく様子とか(おれがガキの頃にもああいうオバさんたちいたなー)、定年になった東野英治郎電器屋の外交になって挨拶とセールスを兼ねて来るところとか、あるいは殿山泰司の半押し売りとか、細かなエピソードの絡みがよく効いている。

 軽いコメディを撮っても、小津安二郎は実に上手いな、と思う。ちょっとしたシーンでアハハと笑った。小津安二郎ならではの象徴的で強い絵も素晴らしい。