イヤなコピー

 世の中、広告だらけであって、ちょっとでも隙間があると広告が入ってくる。現実世界でも、ネット上でも、だ。果たして広告費に見合うだけの経済活動が世の中で行われているのか、と、ちと疑問に思う。

 そんなこんなで日々、大量の広告コピーを目にするわけであるが、こいつはイヤだな、と思うコピーも中にはある。

 おれが特に嫌いなのはとある学習塾の広告コピーだ。

 

なんで、私が東大に!?

 

 というやつで、電車の壁なんかにふやけた顔の大学生(か合格発表後の受験生か)とともによく出ている。同じシリーズで「京大に!?」「早大に!?」「慶大に!?」というのもある。

 広告コピーのテクニックとしては上手いと思う。広告コピーの手法に、自分のことと思わせる、というのがあるが、このコピーを見ると受験生は「自分も東大に入れるかも」とつかのまでも思うかもしれない。親だって同じだろう。ともて無理と最初から諦めていた大学にこの学習塾に行ったら入れた、何か特別なものがある、ということをごく短い文で表している。繰り返すが上手い。

 しかし、なんともイヤなコピーでもある。

 おれは日本のよろしくないところは、学歴信仰と中央官庁の形式主義・肥大だと思っていて、この高校コピーは学歴信仰のほうをズバッと突いてくる。広告を目にする側も、知らず、学歴を意識させられる。学歴信仰の拡大再生産のような広告コピーである。

 白状すると、おれにも少しばかり学歴を気にするところがあって、誰かのプロフィールやなんかに卒業した大学が書いてあると「へええ」と思う。何かしらその人の判断の材料にしてしまう。そんなところをおれは恥じている。

 アメリカやヨーロッパには学習塾がほとんどないらしい。それでも勉強の面で優秀な人間は出てくるし、今は高校、大学生の成績でも向こうのほうがおおよそ上ではないか。学習塾が必要ということは公教育に欠陥があるということで、よろしくないなーとおれは思っている(学習塾で食べている人には申し訳ないが)。

 くだんの広告コピーは、そういう、(おれから見て、だが)日本のよろしくない傾向、構造を助長するような内容で、イヤだ、イヤだ、と思うわけである。