大と小

 相変わらず突然の話題で恐縮だが、ジャンルあるいはカテゴリーによって、名前に「大」をつけるのを好むケースと、「小」をつけるのを好むケースがあるようだ。
 わかりやすい例で言うと相撲取りで、例えば、豊ノ島大樹、宝富士大輔、翔天狼大士、舛ノ山大晴、なんていうふうに「大」の字をつけるケースが多い。今、一月場所の幕内の番付をざっと見てみたのだが、下の名前に「小」がつく力士はいないようである(もっとも、しこ名にはかつての小錦みたいな例もあるが)。
 そもそも男の子の名前は大輔とか大二郎とか、大をつけるほうが小をつけるより多いように思う。男の子には(気持も含めて)大きくなってもらいたい、という素朴な願いの表れなのかもしれない。もっとも、江戸時代以前には小太郎とか小源太とか小次郎とか、小をつける場合も割にあったようで、何だろうか、父子関係でも影響しているのだろうか。
 女の子となると、大をつけるケースはあまりないようだ。小春とか、小雪とか、小梅とか、小百合とか、小さくて可愛いのをヨシとする傾きがあるようである。まあ、小雪ちゃんだからいいのであって、大雪ちゃんというのは交通の便を考えてもあんまりよろしくない。姉妹で大梅・小梅というのも次郎長一家みたいになってしまい、女の子の名前としてはちょっと問題がある気がする。
 落語家は小をつける習いがあるようだ。小さん、小文枝小円遊、小朝、小せん、小ゑん……。師匠に対して一歩下がる意味で小をつける場合もあるのだろうし、客を上にしてへりくだる意味もあるのかもしれない。あるいは、柳家小三治だからいいのであって、いくらリッパになってほしいからといって、柳家大三治(やなぎやだいさんじ)ではいろいろと故障がありそうである。