ほんの少しの勇気がなくて

 ほんの少しの勇気がなくて、できないことということが、生きていれば多々ある。そうして、そのとき、ほんの少しの勇気がもしあったなら、人生は変わっていたかもしれない。

 わたしはよく近所のレンタルビデオ屋で映画のDVDを借りて見る。支払いはたいがいカード払いで、店員にもよるのだが、基本に忠実な(のか?)店員は「お支払いは一回でよろしいですか?」と訊ねてくる。

 金額は、金250円ナリ。一度、「いえ、36回払いで」と言ってみたいのだが、ほんの少しの勇気がなくて、実現できないでいる。

 わたしの手計算では、全国で推定296万人の人が、「一度は言ってみたい」と考えたことがあると推測される。ほんの少しの勇気がないのだ。そうして、季節は移ろいゆくのである。関係ないか。

 ――なんか、この話、前にも書いた気がするな。まあ、いいや。書いているとき、新鮮ならね。