言葉のユンケル

 お盆休みをとっていた方は、仕事に戻ってもなかなか調子が戻らず、何となくぼやっとしているのではなかろうか。


 英気を養う、というけれども、休んだ、ヨシ、仕事頑張るぞ、となれる人を、わたしはエラいなー、と思う。


 自分はというと、どうもダラケぐせがついてしまって、あー、仕事、やーだなああ、と、全体に、灼けたアスファルトの上に落っこちたソフトクリームのような態度でいる。


 もっとも、お前は休みなんぞとらなくても、いつもダラケているだろうが、と言われると、シィマセンというほかないのだが。


 こういうとき、簡単に勢いをつける方法がある。


 それは、


「述語を繰り返す」


 これだけである。


 例えば、「走る」だったら、「走る、走る」と言うわけだが、このとき、最初の「は」の音にアクセントを置く。「しる、はしる」という感じだ。


 こんな会話になる。


「どう、電車に間に合った?」
「何とか間に合ったけどね。いやもう、しる、走る」
「暑いから、大変だったろ」
「もう、汗、く、かく」
「汗かいて電車に乗ると、冷房、きつくない?」
つい、きつい」
「寒くなるよね」
「もう、むい、寒い」


 何だかよくわからんが、勢いだけはつく。


 まあ、空元気なのだが、空元気だって元気は元気である。言葉のユンケル、とわたしは呼んでいる。


 上の例でもわかるように、この繰り返しの法、「もう」という言葉と相性がよい。
「もう、おちょくる、おちょくる」、「もう、怒る、怒る」、「もう、逃げる、逃げる」などとやると、いっそう、勢いがつく。


 細かに言うと、最初の音にアクセントをつけるだけでなく、少し伸ばし加減にすると、なおよい。「はーしる、はしる」というふうにだ。


 この手法を使って、わたしの日常を活写すると、こんなふうだ。


朝、起ーきる、起きる。
ウンコ、する、する。
日記、書く、書く。
飯、食う、食う。
仕事、する、する。
飽ーきる。飽きる。
逃避する、する。
言い訳のメール、書く、書く。
そいつをおーくる、送る。
怒られる、怒られる。
ヤケになる、なる。
酒買って、飲む、飲む。
もう、酔う、酔う。
ウレシクなる、なる。
歌う、歌う。
おーどる、踊る。
体力、ない、ない。
もう、疲れる、疲れる。
睡魔、来る、来る。
ねーむる、眠る。
朝、起ーきる、起きる。
ウンコ、する、する。
日記、書く、書く。
飯、食う、食う。
仕事、する、する。
飽ーきる。飽きる。
逃避する、する。
言い訳のメール、書く、書く。


 勢いをつけてみても、何の解決にもならないことがわかった。

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「今日の嘘八百」


嘘五百十六 徳光サンは来年、走らされるんじゃないかと、内心、ビクビクしているらしい。