文字通り

「こいつらが日本語をダメにした」(ちくま文庫ISBN:4480032630)という本があって、むちゃくちゃ面白かった覚えがある。


 赤瀬川原平、南 伸坊、ねじめ正一が集まって、慣用句を文字通りに捉えて鼎談する。それだけなのだが、その内容が実にくだらなく、素敵なのだ。


 例えば、「道草を食う」なら、文字通り、「道に生えている草を食う」と捉える。
 今、手元にないので記憶で書くのだが、


『カップルが土手で道草を食っている』なんていうの、いいねえ(笑)。


 というセリフがあったのを覚えている。素敵だ。


 今日やんなきゃいけないことは忘れるのに、こういうことは覚えているんだから、どうしたものか。
 脳の記憶容量の無駄遣いだ。ただでさえ、容量が少ないというのに。


 それはまあ、いいが、同じ伝で「石に齧りついてでも」なんていう表現を文字通りに捉えると、どうなるだろう。


 季節柄、「石に齧りついてでも、志望校に合格する!」と決意しているセーショーネンも多いと思う。しかしね、合格はともかく、齧りつくのはやめといたほうがいいと思うよ。


 わたしの想像する「石に囓りついてでも」は、こういうイメージである。



石に囓りついてでも


 何を達成したいのか、よくわからない。


 リアルに想像すると、強烈である。
 地面に石が顔を出している。両手に収まるほどの大きさだ。
 やおら腹這いになり、石を手で抱える。
 顔を近づけ、大きく口を開く。ウサギのごとき門歯で――。


 ガリリッ。


 うひゃああ。


 今、想像力の優れた人ほど、キツい思いをしたんではないか。
 人間、考えないほうがいいことってのもあるわけですね。

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「今日の嘘八百」


嘘三百四十六 競泳のバタフライは誤解を広めている、と蝶の原告団が訴訟を起こしました。


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