航空会社オッズ

 那覇空港の事故は、乗客・乗員が全員助かったのがまずは何よりだった。


 不幸中の幸いという言い方はこの場合、あまりしっくりこない感じがする。


 航空機の爆発炎上が不幸かというと、ンー、うまく言えないが、ちょっと違う種類のことのように思う。
 航空会社や空港からすれば不幸なんだろうが、世の大多数の人間は別に中華航空にも那覇空港にも関係なく生きている。


 一方で、乗客・乗員のほうは生きていて元々なんだから、それを幸いと呼ぶのも合わない気がする。まあ、死ぬかもしれなかったところを助かったんだから、幸いなのか、やはり。


 相変わらず性能の低い脳味噌で、うまく整理がつかない。まあ、いいか。


 全員助かったからこそ書けるんだが、テレビで見ている分には、あれほどスリリングな映像も、このところ、ちょっとなかったろう。


 最後の乗客(客室乗務員かな)が脱出シュートから滑り降り、パイロットが窓から飛び降りて、秒単位で爆発したとき、よくぞ間に合ったと、わたしは思わず拍手した。


 事故だからこういう書き方をする人は少ないだろうけれども、テレビで見た多くの人が、あのシーンを“楽しんだ”はずだ。


 残酷だ、人間ってのは。一般論にしちゃいかんか。少なくとも、わたしは残酷だ。ああいう映像を見て、ヨロコんでいる部分がある。


 事故の遠因として、航空会社の安売り戦略をあげる人もいる。
 航空会社間の厳しい競争に耐えるため、チケットを安くする。そのためにコストの削減を図るんだが、そのことがどこかで無理をきたして、事故につながったんじゃないか、というわけだ。


 もちろん、現時点では検証しようがない。


 しかし、その話を聞いて思ったのだが、航空チケットにオッズを導入するというのはどうだろう。
 チケットを販売する際に、価格とともに、その時点での航空会社の事故の可能性を、オッズとして表示するよう義務づけるのだ。


那覇台北間往復
○○航空 52,000円 オッズ5.4
□□エア 63,000円 オッズ2.7
××航空 39,800円 オッズ23.5


 なんていうふうに。
 オッズが高いほうが事故にあう確率が高い、あるいはひどい事故にあう可能性があるのだ。


 オッズの計算は、しかるべき機関が、各航空会社の起こした事故の程度と飛ばしている本数を元に計算して、公表すればよい。
 例えば、オーバーランは1回10ポイント、エンジン不調の場合は1回50ポイント、墜落は1回1,000ポイント、なんてふうに。


 乗る側は、価格とオッズを睨みながら、どの航空会社のチケットにするかを選ぶ。
 高くても鉄板ガチガチの航空会社しか選ばない人間もいれば、当然、穴党も出てくるだろう。


 こういうことを書くのは不謹慎なのだろうか。


 しかし、各航空会社は販売に直結するから、オッズを低くしようと安全策に力を入れるようになるだろう。なかなかいい制度だと思うんだがな。


 それに、オッズの高い航空会社の飛行機に乗るときは、随分とスリルを味わえるはずだ。
 出発ロビーで待っているときから、もうドキドキ胸が高鳴っている。ゲートをくぐるときには口から心臓が飛び出しそうになり、エンジンのあの「ウィーン」という音が高まったときには緊張しすぎて思わずモドしてしまう。


 それでもって、オッズ125.7くらいの大穴の航空会社を使って、無事、目的地に着いてご覧なさい。
 万馬券が当たったようなものだ。乗客全員から歓声があがるだろう。あるいは、万歳三唱だ。


 客室乗務員と抱き合って、泣きながら喜んだりして。

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「今日の嘘八百」


嘘五百十七 欽ちゃんと日テレ・スタッフは、航空機事故が1日ズレてくれて、ホッとしたらしい。