飛行機バナシ

 1カ月ほど前に那覇空港で派手なアクション劇を見せてくれた例の航空会社が、今度は佐賀空港で滑走路のオーバーランをやったそうだ。
 新聞に写真が載っていたが、飛行場の柵ギリギリのところで浮かび上がったように見える(よくまあ、撮っていたものだ。もしかして、「まーた、何かやらかすだろう」とマークしていたのだろうか)。


 どちらのケースも人的被害はナシ。2度ともぎりぎりのところで助かったわけで、運がいいんだか悪いんだかよくわからない。


 わたしは割に飛行機が苦手で、乗っているとどうも落ち着かない。


 あの離陸のときの、キーンという音の高まりにはスリルがあるし、ふわっと浮いて地上が遠ざかっていく感じは面白い。しかし、やはり、いざというとき、飛び降りることができないのが困る。


「人生、逃げ腰」。わたしは、何事であれ、あらかじめ逃げ道を用意しておくことにしているのだが、その点、飛行機は融通が効かない。


 まあ、新幹線だって同じといえば同じだが、あっちのほうはまだ地面に接しているだけマシである。


 飛行機にまつわる面白い体験談というのはいろいろある。


 ある知人が翼の後ろくらいの席に座った。飛行中、ふと窓の外に目をやると、エンジンが「ヒュルルル、ヒュルル、ヒュル、ヒュルル〜」と止まるのが見えたという。


 驚いてスチュワーデス(キャビンアテンダントとか客室乗務員という呼び方に、いまだに慣れない)を呼び、小声で「あの、エンジンが止まったみたいですけど」と告げた。
 スチュワーデスは知人に顔を寄せ、口に指を当てて、「シーッ」。……と言ったっていうんだが、ホントかなあ。


 別の知人の話だが、離陸してパイロットが機内アナウンスをした。


「This is your captain speaking……あれっ?!」


 そのまま途切れたそうだ。
 機内は急に重苦しい空気となり、不思議と誰も言葉を発さなかったという。


 機内アナウンスといえば、こんなのを聞いた人もいる。


「えー、ただいま、前方に積乱雲が発生しておりますが、迂回していると間に合わないので、このまま突っ切ります」


 これもホントかなあ。類は友を呼ぶ。わたしのまわりには嘘つきが多い。


 でまあ、例のお騒がせの航空会社だが、ペナルティとして、国土交通省の指導で、離陸前にカウントダウンさせることにしたらどうか。


「ファイヴ、フォー、スリー、トゥー……」


 乗客は不安感が募り、二度と乗るまいと思う人も出てくるだろう。


 一方で、全員でカウントダウンを唱和してしまい、大盛り上がり大会になってしまう可能性もないではないが。

                  • -


「今日の嘘八百」


嘘五百五十六 アインシュタインによれば、あれは本当は飛行機が飛んでいるんじゃなくて、地面が落ちてってるらしいけどね。