坂落とし

 イギリスのとある町で行われているお祭りの映像。
 急坂の上からチーズを転がして、それをいっせいに追いかける。人々があまりに豪快に転がるので、大笑いした。


クーパーズヒル・チーズローリング


 異星人がいきなりこの映像を見たら、「地球人というのはもしかして馬鹿なのではないか?」と思うかもしれない。


 手足を折る人も出てきそうだが、転がっている人々、とても楽しそうだ。


 加速して、コケて、転がって、あららららららら。その楽しさは何となくわかる。


 スキーでコケると、雪の上をなすすべもなく滑り落ちていく。自分ではいかんともしがたく、万有引力のされるがまま。ああいう、あー。という状態には、なぜだか不思議な快感がある。


 ダメになっていく楽しさだろうか、それとも人間、基本的に二本足で立っているということに無理があり、坂を転がり落ちると、解放されたような心持ちになるのだろうか。そういえば、自転車で下り坂を駆け下る、なんていうのも、恐怖・不安とともに、快感がありますね。


 一方、長野県の諏訪大社御柱の木落しは、あくまで雄々しい。


御柱その1


 チーズローリングがあららららららら、なら、御柱はおらおらおらおら、である。


「ワシ、行くけん」、「死んでも本望じゃけん」と、まあ、それは広島弁だが、アッパレ、ニッポン男児の心意気。氏子達は一種異様なコーフン状態に陥るらしい。


御柱その2


 実際、毎回(6年に一度行われる)のように死者が出るとか。


「危いので注意しましょう」などというセコい区役所広報担当的感覚なんぞ、百光年の彼方へとケ飛ばしてしまっているのだろう。


 しかし、先頭にまたがって気合い入りまくったり、柱の上で旗を振ったりしているオッサンだって、普段は市役所の戸籍係とか、「バイ菌というのは思った以上に繁殖しているものです。ご家族の安全のためにぜひ」などと抗菌スプレーのセールスとかをしているんだろうから、人間というのは実にいろいろであります。

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「今日の嘘八百」


嘘四百五十五 次回の御柱には、チーズローリングの、下で受け止めている人達を招くそうである。