いかんともしがたい快感

 風邪を引くと、いかんともしがたい状態になる。どうにかしようとしてもどうにもならくて、「あー、だめだー」と諦めるしかないふうになる。苦しいといえば苦しいのだが、一方で、ダメの流れに身を任せるのには、ちょっとだけ快感もある。

 スキーで転倒すると、よく、ずざざざと雪の上を滑り落ちていく羽目に陥る。じたばたしようにもどうしようもなく、どこかで止まるまで身を任せるしかない。あの雪上滑り落ち私何にもできません状態の「あー」という無力感と、いかんともしがたい快感はよく似ている。

 ユニコーンに「いかんともしがたい男」という曲があった。確か、「ケダモノの嵐」に入っている。熱が出て仕事先に「行けません。すみません」と電話するというだけの内容なのだが、いかんともしがたい不思議に甘やかな無力感がよく表れていたと思う。

 いかんともしがたい快感というのは、放下の快感だろうか。