三平さんの思い出

 相変わらず、携帯音楽プレーヤーで落語をよく聞いている。


 先日、電車の中で立川談志の「三平さんの思い出」を聞いていた。


 昭和55年(1980年)に林家三平が急死した直後に、寄席で談志が即興でやったものだという。


 三平の生前、談志は三平のことをケナしていたらしい。


「三平さんの思い出」でも、斜に構えて時には悪しざまに言いながら、しかし、“ついこの間までそこにいた人”に対する真情が感じられて、とてもいい。
 観客の反応も、三平への愛情にあふれている。


 見事にヤラレた。聞きながら、涙が出てきた。


 落語を聞きながら涙が出たのは、あくびの涙を別にすれば、初めてである。
 人情噺なんかも、聞き入ることはあっても、別に泣くことはない。


 しかし、電車の中である。ぼろぼろ泣くのはみっともない。
 何とか涙を止めようと、圓楽の顔を想像することにした。


 だが、それでも涙は出てくる。
 電車に揺られながら、「なんでおれ、圓楽の顔を思い浮かべながら泣いているのかなあ」とわけがわからなくなった。

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「今日の嘘八百」


嘘三百五十四 わたしの父母が田舎でわたしの著作権をめぐって争っているらしい。


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