仕事の関係で、インタビューを聞いたり、書き起こしを読んだりすることが多い。
実際にやってみると誰でも気づくと思うが、インタビューには「やっぱり(やはり、やっぱ)」という言葉がもの凄くたくさん入る。
インタビューをまとめる人間は、この「やっぱり」をどんどん削っていく。まったく、報酬の5%くらいは「やっぱり」を削除することから発生しているのではないか、と思うくらいだ。
辞書で引いてみると、「やっぱり」にあたる英語は、“all the same”、“nevertheless”だそうだ。“yet”も、文脈によっては「やっぱり」に当たるかもしれない。
しかし、どうだろう。英語のこれらの言葉、日本語による会話の「やっぱり」ほど、たくさん使われるのだろうか。
あまり聞かない気はする。
ただ、これはわたしの乏しい英会話の体験によるものだ。
また、「やっぱり」に当たる単語を使わないでも、同じようなニュアンスを出す話法があるのかもしれない。
そこらへん、英会話に堪能な方がいらっしゃったら、教えていただきたい。
さて、「やっぱり」を使う、なんつーんだ、メンタリティ、というのはどういうものだろうか。
メンタリティなんて言い出すと、ややこしいな。別に難しいことではなくて、どういう感覚で「やっぱり」を使っているのか、を考えてみたい。
ためらい、逡巡の後で、「やっぱり」こうだ、と言うこともあるだろう。
いろんな議論もありましょうが、と、一応、自分の理解の幅広さ、鷹揚さを示しておいて、「やっぱり」こう思います、と自説を述べる場合もあると思う。
もちろん、話すほうは、いちいちそんなことを理屈立てて考えているわけではない。
脳の言語中枢において猛スピードで状況やら欲求やら気兼ねやら気遣いやらこれまでの失敗例・成功例やらを処理して、我々は言葉を発するのだ。
「やっぱり、ラーメンにする」、と。
第1条 天皇は、やっぱり日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
「やっぱり」の働きが何となく見えてくる。
第9条に「やっぱり」を入れると、ちょっとばかり物騒になる。
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、やっぱり永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、やっぱりこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
第14条 すべて国民は、やっぱり法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 やっぱり華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、やっぱりいかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、やっぱりこれを保障する。
2 検閲は、やっぱりこれをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第60条 予算は、やっぱりさきに衆議院に提出しなければならない。
第65条 行政権は、やっぱり内閣に属する。
全体にダメさがただよう。
一方で、何かこう、いろんなスッタモンダ、紆余曲折、細木数子対加賀まりこのような恐るべき対決の果てに、ようやくできあがった憲法というふうにも、感じられる。
やっぱり。
-
-
-
- -
-
-
「今日の嘘八百」