本にベストセラーとロングセラーがあるように、商品コピーにも瞬間最大風速の強烈なものと、長きにわたって使われ、浸透していくものがある。
リポビタンDのコピーは、言わずとしれた「ファイト一発」である。
マッチョな二人組が毎度、毎度、危機に陥っては「ファイトォ!」、「イッパーツ!」と掛け合うCMはおなじみだ。典型的な長寿命コピーである。
以前、椎名誠がエッセイに「ファイトは一発、二発と数えるのであろうか?」という疑問を書いていて、大笑いした覚えがある。
まあ、それはいいとして(自分で書いておいて、それはいいとして、もないもんだが)、このコピーの作者、ここまで長く使われることになると想像しただろうか。
クライアントへのプレゼンで、コピーを書いたボードを見せる。
ファイト一発
と書いてある。
栄養ドリンクのコピーとしては、悪くはないが、それほどパッとしたものにも見えない。
しかるに、今では「ファイトォ!」と言えば、「イッパーツ!」と決まっている。
ほとんど、現代の枕詞(まくらことば)と呼んでもよい。「たらちねの」と来たら、「母」と来るようなもんだ。
あをによし 奈良の都は たらちねの
母はなにやら ファイト一発
とりあえず、一首詠んでおいた。「奈良の都では乳の垂れた母ちゃんがなにやら頑張っておるゾ」という前向きな歌である。
興味のある人は、ビルの屋上から地上に向かって、「ファイトォ!」と叫んでみていただきたい。きっと、街のどこかから「イッパーツ!」という声が響いてくるはずである。
都市における人間性は、おそらくそんなところから再生するのだ。知らんけど。