そんな設定をそのまま借りたCM。
とらやの上がりかまちに腰掛けたタコ社長(太宰久雄)が嘆いている。
「あ〜、DTPに押されて、うちの工場(こうば)はもうダメだ。一家心中するしかないよ」
律儀な博(前田吟)が正座して説得する。
「社長、そんなこと言わないで。新しい機械を入れれば、まだ頑張れますよ」
「うん、うん。そうだな。……もう少し頑張ってみるか」
場面変わって、博とさくらの家。食卓で、博が悩みながらも、さくら(倍賞千恵子)に言う。
「やっぱり、いけないよ! ソフトを黙ってコピーするなんて」
「でも、そんなこと通報したら、工場はどうなっちゃうの。若い工員さんも、社長の家族も、みんな、行くところがなくなっちゃうのよ!」と、さくら。
「ダメなものはダメなんだっ!!」
意を決して電話の受話器を取る博。
画面下に「通報者の秘密は守ります。」という一行。横に小さくタコ社長の泣きっ面が出て、
「あ〜あ、違法コピーさえしなきゃあなあ」
とまあ、そんな痛快なCM。
自信を持って言うが、このCM、かなりの不快感をもって迎えられるだろう。わたしも今、あまりの不快感に、キーボードを拳で叩きながら、これを書いている。あ、今、「U」のキーが飛んでいきました。
なぜ不快なのかというと、タコ社長の印刷工場が、少々わずらわしいような、でも、ほっとするような、身内意識の煮込みみたいなものだからだろう。
博が持ち前の誠実さから違法コピーを通報したら、「家族を売った」かのように捉えられかねない。「男はつらいよ」世界への冒涜でもある。
えーと、一応、言っておきますが、昨日も書いたように、違法コピーの通報に反対しているわけじゃありませんよ。ええ。わたしは人間というものを面白がっているだけです。
えー、タコ社長。違法コピーはやめときましょう。え、あ、亡くなっちゃった? 8年前に?
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「今日の嘘八百」
嘘三百十六 快感は浅いが、不快感は深い。