外来種は悪なのか?

 よく使う地下鉄駅にこんなポスターが貼ってあり、ムムムとなった。

 

 

 外来種に対するいわゆる啓発ポスターである。「ラストカルテ」というのは読んだことないが、おそらくそういう漫画があり、行政と漫画とのいわゆるコラボというやつなんだろう。

 おれがムムムとなる理由をとっさに自分で深掘ってみると、どうも外来種=悪という一面的な捉え方に納得できないからのようだ。

 ポスターでは、アカミミガメ、アメリカザリガニが条件付特定外来生物に指定され、野外に放すと刑事罰を食らうことがある、と書いてある。であれば、アカミミガメとアメリカザリガニを中心にポスターをつくればいいものを、頭ごなしに「外来種、捨てない、拡げない!」と話をそれこそ大きく拡げている。イナモトが馬鹿だからといって、人類全体を馬鹿と考えてよいのか? というのと似た疑問を覚える。

 これはおれの直感だが、外来種を忌み嫌う背景には、外国人を嫌う集団心理が働いているのではないか。いわゆる排外主義。外から入ってくる人間になんとなく反感を持つ、侵食されているような気になる、しかしおおっぴらにそれを口にするのははばかられる、そのモヤモヤした心持ちが「外から入ってくる生物」に対する攻撃として噴出しているんではないか、とまあ、おれはそんなふうに思う。なぜならおれにもそういう心の働きが少しあるからだ。いや、面目ない。

 裏の心理はともかく、外来種=悪、と決めつけていいのかというと、いささか疑問にも思う。外来種は既存の生態系を破壊するかのように言われているけれども、実際には人間の活動で生態系が破壊され、その跡地にたまたま外来種が拡がるというケースもあるようだ。

 環境省のWebサイトをとっさに見ると、外来種とは「もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって他の地域から入ってきた生物のことを指します」とある。

 もしそうならば、この二千年ばかりの間に、日本で最もはびこり、生態系を破壊した外来植物は稲だろう。

 なにせ、日本のそこらじゅうを田んぼに変え、はびこり、そこにいた植物も動物も追い出してしまった。もちろん、人間の活動があってなんだが、地形も、水の流れも、変えてしまった。生態系は作り変えられた。しかし、それが悪く言われないのは生態系云々ではなく、人間に都合がよかったからだろう。勝手なものだ。

 同じ伝で言うと、日本で最もはびこり、生態系を破壊した外来動物は人間=多くの日本人の祖先である。

 しかし、稲も人間も外来種として叩かれることはない。既成事実化してしまったからだ。アメリカザリガニからすれば、ズルイ、ということになるのかもしれない。