競争と風物詩

 おれは実家の宗旨が浄土真宗だし、個人的にはお不動様を信仰しているから、クリスマスを祝うことはない。しかし、あの冬の、特に夜の雰囲気は好きである。
 だが、最近は街のクリスマスの飾り付けが早すぎるんじゃないかと思う。六本木ヒルズ界隈のけやき坂はもうこんなになっていた。

 あのねー、まだ11月も上旬だぜ。
 しかし、商業地は全体にすでにクリスマスの飾り付けが始まっている。知り合いのショップの店長に聞くと、「よその店が飾り付けを始めるから、遅れるわけにいかない」んだそうだ。華やかにクリスマスの飾り付けをしている店のほうが客が入るから、よそと合わせないと商売上不利になってしまうということらしい。
 こういうのはもう進むことはあっても退くことはない競争であって、おそらく、今後もずっと、2ヶ月も前からクリスマスの飾り付けという習慣は変わらないだろう。京都の大学のある先生が、「鴨川の床は本来夏の涼みのためのもので、最近のように5月から出すのはおかしい。伝統を食いつぶすようなものだ」と言っていたが、おそらく、客が減って収支が悪くなるまで床を出す時期が戻ることはないだろう。市場競争というのはそういうものだと思う。
 風物詩的なものはきちんと適切な時期にのみにしてほしいとおれ自身は思うけど、まあ、商売が大きく関わるものは無理だろうなあ。