戦国ポイントカード

 最近、といってもここ5年から10年くらいのスパンの話だと思うが、「ポイントがたまる」というサービスがやたらと増えたように思う。店のレジに行くと、かなりの割合で「ポイントカードのご利用はございますか?」と聞かれる。そんなもの何枚も持ち歩いたり、カード入れから出し入れしたりしたくないので、おれは一切関わらないようにしている。いちいち「いえ、結構です」などと言うのも面倒くさいから、首から「ポイントの利用はございません」という札をかけておこうかと思うくらいである。
 おそらく情報技術が進んで、安価に読み取りやデータ管理ができるようになったせいなのだろう。店としてはポイントを餌にして客を囲いこもうという作戦なのだと思う。しかし、そのために何枚もカードを持ち歩かねばならず、レジの前でカード入れをごそごそやらねばならず、どれがどのポイントカードやらよくわからず、世の中便利になっているんだか不便になっているんだかよくわからない。
 で、ここからは科学技術の複合的進化などということは豪快に忘れ去って書くのだが、戦国時代にポイントカードの技術があったらどうなっただろうか。
 合理主義者で新しもの好きの信長あたりはすぐに取り入れたんではないか。
 首実検の場で、
「又左(前田利家)、こたびの戦はどうであったカ」
「ハ。槍で大将首をひとつ、頭(かしら)首をみっつ落としてござる」
「デアルカ。ポイントカードのご利用はございますか?」
 ピッ。
「うむ。100ポイントたまったので、井戸の茶碗と交換できるゾ。交換なさいますか、それちにこのままためておかれますか」
「ハ。では、そのままためておいてくだされ」
 大戦さのときなんぞ、事務の効率があがってすこぶる便利である。システム管理は石田三成あたりが綿密にやってくれそうだ。
 さらに技術を発展させると、武将の額にICタグを埋めておく、なんてこともできそうである。そうすれば、いちいち首実検なんぞしなくても、斬り落とした首のタグをリーダーで読む込むだけで相手の名前から地位、ポイントの換算、敵方の武将情報更新、敵味方相互の討ち死に武将の照会まで瞬時にできてしまう。
 ただし、そのためには規格の統一と情報の一元管理が必要になるため、天下統一の後押しになるわけである。そうして、天下統一の暁には戦なんぞなくなるから、あれ? 意味がないか。