過去の近さ

 前回に続いて、過去というのは思っている以上に実は近いんではないかという話。
 たとえば、平均して25歳で子供が生まれる、つまり次の世代が生まれるとする。そうすると、25歳の人のおじいさん(おばあさん)は75年前に生まれた計算になる。今年は2013年だから、75年前というと1938年、昭和13年である。国家総動員法が施行された年だ。まあ、おじいさん、おばあさんは割と近しい存在だし、話も聞いたりしているだろうから、このあたりの感覚はそう特別ではないだろう。
 で、このおじいさん(あるいはおばあさん。以下略)のおじいさんは1888年明治21年)生まれである。19世紀に突入した。日清戦争より前で、翌年に大日本帝国憲法が制定されている。イギリスではまだビクトリア女王の治世である。おじいさんのおじいさんくらいでもうそのあたりまで飛んでしまう。
 もう少し世代の間をゆるやかにして30歳で新しい世代が生まれるとすると、今の30歳の人のおじいさんのおじいさんが生まれたのは150年前、1863年、文久3年である。長州は関門海峡で外国船にバカスカ大砲を撃ち込んで逆にボコボコにやられ、京都で新撰組が結成され、西郷さは遠流先の沖永良部島で「おいどんは西郷どんでごわす」などと自己紹介し(そんなことは言わないか)、アメリカでは南北戦争真っ最中で、リンカーン奴隷解放宣言を出したりしている。おじいさん、のもひとつ上のおじいさんでもうそんな時代だ。
 有為転変。時代の流れが早いのか、人の生きている時間が長いのか、などと思う。