ダメの話

 仕事をしていて、自分の集中力のなさに呆れることがある。小川洋子の小説「博士の愛した数式」に出てくる「博士」の記憶力は80分しかもたなかったが、わたしの集中力はせいぜい8分しかもたない。どちらが悲劇的かというと、もしかするとわたしのほうが悲劇的なんじゃないか。

 集中力に欠けるというのはガキの時分からそうで、小中学校の頃は授業中に話をしたり、椅子を前後に揺らしたり(そうして、大音響とともにひっくりかえるのである)、まわりの席の生徒に紙を回して五目並べをしたりと、ロクなことをしなかった。学級崩壊の先駆者だったのかもしれない。

 もっとひどいのは意欲のほうで、わたしのやる気は80秒しかもたない。何しろ、鼻クソほじりながら出てきたというのが、わたしの生まれた産院では伝説になっているくらいだから、投げ遣りも筋金入りだ。

 薬物乱用防止の「ダメ。ゼッタイ。」というコピーが、別の意味を持って響く日々の暮らしである。