マッチ

 マッチ、といっても、もちろん、近藤真彦について熱く語りたいというわけではない。


 例のボクシング一家へのバッシングが凄いことになっているようだ。


 わたしは元々、ああいう芸の拙い下品さは苦手なので、あの一家のことは34kmくらい距離を置いて見ていた(り見ていなかったり)。
 だから、せいぜいテレビのニュースや週刊誌の見出し程度の知識しかないのだが、1人1人の悪意は大したことがなくても、総計すると大変な量になるようだ。


 世間はあの一家に対して、持ち上げたり蹴落としたり、アップダウンが激しい。


 いくらかはテレビ局が強引にスターへと仕立て上げる構図への、反感もあるのかもしれない。


 これでしばらく経って、何か悲劇でもあれば、オセロの石はひっくり返るだろう。


 あの一家堀江社長に似ていると思う。
 毀誉であれ、褒貶であれ、注目され続ける限り、食っていける。


 堀江社長の場合も、いろいろと騒ぎを起こしては注目を集め、自社の株価を高くしていた。あえてふてぶてしい態度をとったり、挑発的なことを言ったりすることで、お金を集めていた。逆に言えば、そうでもしなければやっていけなかったのだろう。


 でまあ、それにマスコミがまんまとノッた。世間もノッた。


 あの一家も、堀江社長も、マッチポンプ的だ。ただし、火消しのほうはあんまりやらないから、もっぱらマッチである。


 ああいうマッチの人々を本当にやっつけたいのなら、放っておけばよい。彼らにとって無視されるのは、叩かれるより痛いはずだ。まず食えなくなる。


 しかし、世間は無視したりしないのよね。談志師匠ではないが、騒いでないと間がもたないから。それに、変にウブなところもあるから。

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「今日の嘘八百」


嘘五百六十六 誰もマッチを買ってくれなかったマッチ売りの少女は、やさしかったお婆ちゃんを思い出しながら、街に火をつけてまわったという。