椅子に座るとき、どういうわけかきちんと座っていることができない。つい、足を前に投げ出し、仰向けに近いような格好で座ってしまう。傍目から見ればあまり態度のよい座り方ではなく、何やら不遜に見えるだろう。ワンマン社長が「ああ、話はわかった。しかし、山田君、キミはウチで何年働いとるのかね?」などと部下を威圧するにはよい座り方なのかもしれないが、残念ながらわたしは社長ではないし、目の前に山田君もいない。
仕事の打合せのときなど、最初はこの座り方をしないように気をつけている。わたしだって社会常識というものを持ち合わせているのだ。しかし、その社会常識は5分後にはどこかへ漂い去っている。絵で描くならこんな具合だ。
結局は、「しかし、山田君」スタイルに陥るのである。
椅子にまともに座っていられないというのは昔からそうで、学校時分にはよく椅子をゆらゆらしていた。どういうことに相成るかというと、
後ろの机にしたたかに後頭部をぶつけたり、ひっくり返って教室に大音響を鳴り響かせたりするのである。
学校を舞台にした映画なんかで、生徒達がきちんと座って先生の話を聞いているシーンを見ると、全員があんなにおとなしくしていられるものだろうか、と思う。キミ達には、椅子という束縛から解放されたいという願望はないのか? 合唱コンクールで「♪この大空に翼を広げ」などと(先生から言われるままに)歌っておるくせに――いやまあ、おれが悪いんだけどさ。