中毒

 エー、食品中毒の稲本です。しばらく食品を摂取しないと、禁断症状に見舞われて、苦しくってなりません。
 専門の医者に言わせると、そのまま放っとくと、確実に死に至るんだそうで、実に困ったものであります。皆さんも気をつけてください。


 中毒にもいろいろありますが、最近は携帯の中毒になっている人をよく見かけますな。
 ちょっとでも合間ができると、携帯をチェックしないではいられない。


 女子高生やなんかには、「携帯がなかったら、死んじゃう!」なんぞと言う人もいるんだそうです。
 そしたらいっぺん死んでみろ、と思うんですが、新聞やテレビで騒ぎになるでしょうな。「女子高生、携帯がなくて死亡」。まあ、あの人らは何でもかんでも、死んじゃう、と言い出す人達なので、放っておけばよいのでしょう。


 近頃は、落語の会やお芝居に行くと、休憩時間になると、すかさず携帯を開く人をよく見かけます。
 もう、休憩になるのを待ってました、とばかりに携帯を開く。何シニ来テオルノカ、コノ人達ハ、と思うのですが、実にせわしないことでございます。


 まあ、それぞれ何をしようと勝手なのですが、幕が下りて、隣に座っている人がパッと携帯を開くと、急にこせこせした現実世界に引き戻された気になって、興をそぐ感じもいたします。


 あれはメールが来てないかチェックしたり、今、自分がどこで何をしているか、友達にメールを打ったりしているのでしょうか。
 わたしはあまり携帯を使わないのでよくわからないのですが、何ともせわしない。


 しかし、本当のこと言うと、わたしもそういう人達のこと、全くわからないわけでもないのです。
 自分でも、携帯を持って歩くと、何かこう、チェックしないではいられない心持ちになる。電話なんてさほどかかってこないのに、あるいはメールなんて自分が出さないから他からも来ないのに、それでも何か気になってしまう。


 ああいうのは、こっち側で道具を使っているつもりが、いつの間にか道具に使われている気がいたします。


 まあ、今は、人にいろいろ刺激を与え続けて、どうにか世の中が成り立っているところもあるので、仕方がないのかもしれません。


 わたしは、携帯が気になるのがイヤなので、何かを見にいくときは、携帯を家に置いていくことにしております。
 なので、携帯でわたしがつかまらないときは、たいがい、仕事を放っぽらかして、どこかに遊びに行っているということでございます。


 自分で白状してしまいました。スパイと犯罪者には向かないタイプの男でございます。

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「今日の嘘八百」


嘘七百三十八 公共事業が減って困っている地方の建設会社を四川に派遣したらどうか。