並ぶ展覧会

 先日、上野に行く用事があったついでに、「そう言えば、ダリの展覧会やってたな」と見にいくことにした。


 わたしは特段、ダリが好きというわけでもなく、美術史の本などで有名な絵を見たことがある程度だ。
 横浜美術館で何枚か生で見たことはあるが、さほどいいとも面白いとも思わなかった。


「ま、ご参考まで」的態度で上野の森美術館に入って、すぐに諦めた。
 平日だからそんなに混んでいないだろうと思っていたのだが、大変な混雑である。


 3人くらいの幅の列が、壁にかかった絵を前に、のろのろ牛歩戦術をとっている。


 昔のソ連で肉買おうってんじゃないからさー、と、その時点で萎えた。


 わたしは昔から列に並ぶということが嫌いで(好きな人はあまりいないだろうが)、小学校の全校集会では、泣きながら前へならえをしたものである。


 自分も牛になる気はしなかったから、列の外を歩き、壁の曲がりしなにできる隙間から絵を盗み見たりした。
 絵というのは横から見ると何もわからないものだ、ということだけがわかった。


 それでも、先のほうまで行けば、見る人も疲れてきてまばらになるだろう、と進んだ。
 あにはからんや、入場者のミナサンは我慢強く、結構な数の絵が出ているのに、どこまで行っても列はなくならない。


 結局、最後までほとんど絵を見ることもなく出てきた。
 入場してから出るまで、10分とかからなかったろうと思う。


 まあ、元々、そんなに見たいわけでもなかったからいいのだが、入場料だけはちょっともったいない。
 千何百円だかを10分足らずでスッたわけで、競馬より少しマシという程度である――何か違う気もするけど。

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「今日の嘘八百」


嘘三百七 舞台で眠狂四郎円月殺法をやると、観客が全員眠ってしまったという。


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