旭日旗である。
より正確には、十六条旭日旗と呼ぶ。太陽からのビームが8本の、八条旭日旗というのもある。
日本陸軍の軍旗、日本海軍の軍艦旗として使われ、今は自衛隊旗、自衛艦旗へと受け継がれている。
図案の発想は明らかで、「日の本」から来ているのだろう。
日の丸と違ってビームが出ているのは、ワッと栄えたい、威光を知らしめたいという願いの表れなのかもしれない。
余談だが――というか、この日記は全文、余談の鼻水垂れ流しみたいなものだが――太陽を赤色で捉えるという感覚、日本独特とは言わないまでも、結構、特殊であるらしい。
フランスに行った日本の子供が、絵に真っ赤な太陽を描いたら、フランス人の子供にとても不思議がられた、という話を読んだことがある。
旭日旗は朝日だから、まあ、赤っぽくても不思議ではない。
それにしたって、朝日が真っ赤っかということはないわけで、太陽=赤色、という捉え方は、自然科学的なマナザシでは不思議である。
もちろん、自然科学的なマナザシだけでは理解できないものが、世の中にはたくさんあるのだけれども。
話は戻って、旭日旗。
図案だけを取り出せば、太陽からビーム、というだけである。
しかし、イメージの付着というのは面白いもので、旭日旗を見ると、軍国ニッポンの象徴というふうに見える。
なぜそう見えるのか、細かい仕掛けはわからない。
学校教育の影響もあるだろうけど、それだけではないだろう。日々、見るもの、聞くものから、気づかぬうちに付着していったものが多いと思う。
例えば、映画の1シーンで、ザッザッザッザッ、と縦列行進する日本軍がこの旭日旗を掲げていたら、そこでひとつ、印象がくっつく。
そんなこんなで、少なくともわたしは、旭日旗を見ると、ある種の圧力、威圧感のようなものを覚えるのだ。
そしてそれは――調べたわけではないけれども――もしかしたら、かつて日本軍が進駐した東アジア、東南アジア、太平洋の島々に共通した感覚なのかもしれない(誰か調査してくれ)。
だとしたら、自衛隊がこの旗を使っているのは、印象という点でいささかマイナスなのではないか。
かといって、今さら別の図案の旗を採用しても、どこの国だかわからなくて困るだろう。
そこで、わたしが提案するのが、この旗だ。
ズビーン。
これなら、平和国家ニッポンの象徴として、ふさわしい。
新たに旗を作らなくとも、既存のものにちょちょっと手を入れるだけで済むところも、甚だ都合がよい。
紺碧の空の下、大海原を行く自衛艦。颯爽と風に翻るは、このニコちゃん旭日旗。おおらかでいいと思う。
もっとも、「おら、ナメとんのか!」と相手方の戦意をやたらと刺激して、無駄に集中砲火を浴びてしまう可能性もないではないが。
断っておくけれども、わたしは風刺をしたいわけではない。
風刺というのは、例外もあるけれど、たいがい、“庶民”を盾にとって、卑屈な態度でやるものだ。
わたしは純粋にくだらないことをしたい。
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「今日の嘘八百」
嘘二百十九 眠りの森の美女が目を覚ましたのは、王子様がいきなり舌を入れてきたからである。