媚び

 今日は、ワタクシ話を書く。


 ワタクシ話というのは、「ワタクシはこういう人間である」と語るもので、まあ、なかなか他人が読んで、面白いものにはならない。


 文章による表現は――あるいは、文章に限らず、表現は、としてもいいのかもしれないが――直接的であれ、間接的であれ、たいてい、ワタクシ話の要素を含んでいるだろう。
 が、そこはそれ、どういう戦法で攻めるか、というところがある。「美しい日本の私」と川端康成がやって、「曖昧な日本の私」と大江健三郎がやれば褒められるが、「淫猥な日本の私」とワタクシがやると馬鹿にされるか、嫌がられるのだ。


 まあ、そんなことはよい。最近、ワタクシについてわかってきたことがあるのだ。


 私は昔から、伝統的な少女漫画や日本のセル・アニメによく出てくる、巨大な目をした人物が苦手だ。奇怪に見えてしょうがない。大昔のSFのBEM(Bug-Eyed Monster=昆虫の目をした怪物。悪役宇宙人として描かれたことが多いらしい)に見える。
 しかし、世の中では何の疑問もなく受け入れられていて、また、結構な人数の人に愛されてもいる。
 このズレが不思議だった。


 まあ、漫画というものはデフォルメなしでは成り立たない。
 また、現実離れしているというなら、古代エジプトの、顔が横を向いて、胴体が前を向いて、足が横を向いて並んでいる絵や、浮世絵だってそうだろう。しかし、私はそういうものを奇怪には感じない。
 なぜ巨大な目の人物画だけが苦手なのか、自分でもよくわからなかった。


 しかし、自分の本(isbn:4794213794 )を読み直して、気づいた。


 本の中では、ファンシーや行政がよくやるひらがな表記(「いきいきふれあいナントカ」の類)も嫌いだと書いている。


 どうやら、私は「媚びているもの」が嫌いであるらしい。
 いや、媚び方にもいろいろあるだろうけれど、ストレートにすり寄ってくる(ように私が感じる)ものが苦手なようだ。


 媚びるなら、もっと上手に、というとちょっと変だけど、粋に艶っぽくか、ウイット、ユーモア、道化のどれかを使って媚びてもらいたい。


 「であるべき」とか、「正しい・正しくない」という話をしているわけではない。あくまで、ワタクシ個人の好みの話だ。


 ワタクシは、どうやら薄味の人生を送りたいようである。


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