2013-01-01から1年間の記事一覧

心中の甘美さと寒々しさ

先週の日曜、国立劇場に文楽を見にいった。昼の部が曾根崎心中、夜の部が心中天網島という心中二本立てである。 どちらも近松門左衛門作で心中が題材だが、作品の描き方が随分と異なっており、一日のうちに二本見くらべるのは興味深かった。 曾根崎心中の心…

怪奇! カサブタ男

今日の話は猟奇的な話になるので、その手の話が苦手な方はご遠慮ください。 前々回谷崎潤一郎について書いたように、食通とか美食家と呼ばれる人たちのアヤシの情熱にはちょっと異常なものがあるらしい。→ 食い意地 古代ローマの貴族が腹一杯になるまで食う…

意味とニュアンスを気にしない英語

おれはコピーを書く仕事をしている。仕事方面の目で世の中を見て、よく気になるのが言葉としての意味とニュアンスを伝える意図のない英語の使用である。 たとえば、今、たまたま手元にあった本を手に取ってみよう。「メデイアの生成 アメリカ・ラジオの動態…

食い意地

例によってのおれは人間が小さいという話なのであるが、食べ物のうまいまずいあるいはあれを食いたいこれを食いたいという声高な話におれはどうも眉をひそめてしまう。中島らもが何かで「口いやしさ」と書いていたが、そういう受け止め方に近い。あるいは、…

爆笑作品

人間的に何かが欠けているのか、おれはどうも深刻さを真面目に受け止められないようだ。まあ、単に深刻になる状態を避けたいという卑怯者の精神の働きなのかもしれない。 たとえば、前にも書いた覚えがあるが、石川啄木。例のとりすました写真の影響か、薄幸…

ジャパンてクールなのか

「クール・ジャパン」という言葉を見ると、何か困ったような心持ちになる。その困ったような心持ちを分解してみると、おおよそ3つに分けられそうだ。客観的な話、他人の主観、おれの主観の3つである。 客観的な話としては、経済産業省が中心になっているクー…

「空気」の研究

山本七平「『空気』の研究」を読んだ。「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))作者: 山本七平出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1983/10メディア: 文庫購入: 84人 クリック: 673回この商品を含むブログ (199件) を見る よく「今の空気」とか「空気を読む(読めな…

写真をめぐる京都

この土日は京都に来ている。昨日はKyoto Graphieという写真フェスティバルを自転車で経めぐった。→ Kyoto Graphie 京都の寺や美術館、ギャラリー、お店など十数カ所で同時に写真の展示が行われている(5月6日まで)。おれの行程は、京都御所近く→二条城(行…

こだわりと味

前回、あれこれこだわる割に不味い天婦羅屋について書いた。 その天ぷらのアゲたくなるような不味さを思い出しつつ(オエオエ)、そもそもなぜ「こだわりの店」なるものがもてはやされるのか考えてみた。 三秒ほど虚空をにらんで出てきた答えは「競争市場の…

こだわりの不味い店

先日、自転車で浅草に行って、昼時を過ぎたので飯を食おうと思った。 天丼がいいな、と思って、知っている店に行くと、テレビか雑誌ででも紹介されたのだろうか、列ができていた。並んでまで飯を食おうとは思わないから、他の店を探すことにした。 自転車で…

体罰について

学校における体罰についておれにはもちろん知識もなければ思想もない。少し前に亡くなった生徒は気の毒だが、自殺というのは必ずしも遺書に書かれたことだけが理由とは限らず、本人にも理由が完全にわかっていないケースもあるだろうから、あまり安易なこと…

年齢とストライクゾーンについて

男の場合、人それぞれ「いいナァ、この人」と感じる女性のストライクゾーンというのがあって、どうやら年をとるにつれてそのストライクゾーンは広がっていくようである。飲み屋でのバカ話レベルだが、おれだけではなく、結構多くの男がそうであるらしい。 ガ…

白兵銃剣主義とものづくり

大東亜戦争における日本軍敗北の組織的理由を扱った「失敗の本質」と、「アメリカ海兵隊」を読んだ。「アメリカ海兵隊」の著者、野中郁次郎は「失敗の本質」の共著者でもある。失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,…

おれと写真

おれ様はこういう人間であるという例によってのおれおれ話である。 外で名所やら気になるものやらを携帯で撮るという姿が当たり前になって、もうだいぶになる。最近はFacebook等々で見せる目的もあるのだろう、飲食店で料理を撮る人も多い。 おれはどうもあ…

遺言状

別に死ぬつもりも予定もないのだが、遺言状を書いてみようと思い立った。常に覚悟をもって事に当たるというのは、名僧や、あの人もこの人も大好きな「サムライ」とやらみたいで(e)(カッコいー)からだ。 遺言状と言えば、まずは遺産の処理について書かずば…

惜しいナァ

地図を見ていて、「惜しいナァ」と思うことがある。例えば、スペインとモロッコの間のジブラルタル海峡。大きな地図で見る もうちょいでヨーロッパとアフリカは地続きだったのに、惜しいナァ、と思う。もっとも、昔から象に乗ったハンニバルやらイスラム教徒…

故郷を卑下する

前回、お国自慢したくなる感覚が今いちわからないという話を書いた。 一方で、おれの場合、生まれ故郷を自虐するのはできそうである。試しに生まれ育った富山を卑下してみよう。1. 空が暗い これはもっぱら冬の話だが、曇り空のことが多く、鉛色の雲がたれ込…

お国自慢がよくわからない

何度か書いた覚えがあるのだけれども、お国自慢の感覚というのが今いちよくわからない。 おれは富山の生まれで、人にそう言うと、 「魚がおいしいですよね」 とよく言われる。 これ、いつも返答に困るのよね。 おいしいと言えばおいしいような気もするのだが…

選んで角度を決めてつなぐこと

下のビデオをちょっと見てみていただきたい。全部見る必要はなく、「ああ、そういう話ね」とわかったらそこまでで十分である。お互い、忙しい。 内容をおすすめするわけでも何でもなく、出来がよいわけでもなく、ただサンプルとしてわかりやすいと思ったので…

おすもうさん

おすもうさん作者: 高橋秀実 (たかはし・ひでみね)出版社/メーカー: 草思社発売日: 2010/08/24メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 34回この商品を含むブログ (13件) を見る このところ高橋秀実づいていて、よく読む。この人の、結論を急がずに人の話をゆ…

船頭多くして

「船頭多くして船山に登る」というけれど、船を山に登らせるなんて、すごいじゃないか、船頭達。