怪奇! カサブタ男

 今日の話は猟奇的な話になるので、その手の話が苦手な方はご遠慮ください。

 前々回谷崎潤一郎について書いたように、食通とか美食家と呼ばれる人たちのアヤシの情熱にはちょっと異常なものがあるらしい。

→ 食い意地

 古代ローマの貴族が腹一杯になるまで食うだけ食ったら、吐いて、また食った、なんて話もあるし、熊の手だのツバメの巣だの、あるいはフグの調理法なんていうものにはやはり歴史的に美食家の食わねばのココロが働いていたのではないかと思うのだ。
 でまあ、そんなことをふがふが考えながらたまたまちょっとできたカサブタを剥がしていたら、アホウな話を思いついた。
 もし、異常に美味なカサブタができる人間がいたら、どういう目に合うだろうか。
 ある男がたまたま自分のカサブタを食ってみたら(時になぜか人間はそういうことをやる)、異常に美味かった。知り合いに何の気なしに話すと、そやつがたまたま美食家の金持ちのタイコモチで、美食家にご注進する。美食家の金持ちはたいがいのものに食い厭きていて、大枚をはたいてその男のカサブタを手に入れる。美味い。この世の物と思えないくらいに美味い。その味が忘れられず、何度となく所望するのだが、男だってそうそう傷しちゃカサブタを剥がすのがイヤだから断るようになる。あきらめきれない美食家は、仲間の美食の秘密サークルの面々と語らって、その男をかどわかし、監禁する。そうして、全身あちこちに傷をつけてはカサブタになるのを待ち、剥がしてはウヒウヒウヒとみんなで食らう。
 ・・・それから幾星霜。地下室の牢屋に監禁された男が発見される。全身の皮膚が剥がされ、カサブタを剥がされたばかりの新しい傷、カサブタになりかかっているところ、剥がれかかっているカサブタ、膿みを含んだカサブタ、半乾きのカサブタと、だんだら模様のこの世の者とも思えない「食材」が、気が違って、唸っていた。
 うひゃー、自分で書いていて気色悪い。気色悪いが、こういう気色悪さというのはなぜか心惹かれるところがある。
 誰か、この話、小説にしないか(面倒だからおれはやらない)? あるいは、ハリウッドでデヴィッド・フィンチャージョナサン・デミあたりが映画化せんかね。企画は300円で売るヨ。