体罰について

 学校における体罰についておれにはもちろん知識もなければ思想もない。少し前に亡くなった生徒は気の毒だが、自殺というのは必ずしも遺書に書かれたことだけが理由とは限らず、本人にも理由が完全にわかっていないケースもあるだろうから、あまり安易なことは言いたくない。
 おれが考えたのはもっとくだらないことである。頬をツネツネしたら、それは体罰なんだろうか? 指で豚の鼻はどうだ。デコピンは? 部活で怠慢プレーをした生徒を後ろから襲って、おなかをコチョコチョ、ゲハゲハゲハ、先生、やめてください! ウヒャヒャヒャヒャヒャ、となったら、それも体罰なのかな、しかしまあ、そんな部はあんまり強くなりそうにないなあ、楽しそうだからま、いっか、などと例によってぼんやり生きていたら、インターネット方面からいきなりこんな文書が出てきた。

→ 文部科学省「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」

・ 体育の授業中、危険な行為をした児童の背中を足で踏みつける。
・ 帰りの会で足をぶらぶらさせて座り、前の席の児童に足を当てた児童を、突き飛ばして転倒させる。
・ 授業態度について指導したが反抗的な言動をした複数の生徒らの頬を平手打ちする。
・ 立ち歩きの多い生徒を叱ったが聞かず、席につかないため、頬をつねって席につかせる。
・ 生徒指導に応じず、下校しようとしている生徒の腕を引いたところ、生徒が腕を振り払ったため、当該生徒の頭を平手で叩(たた)く。
・ 給食の時間、ふざけていた生徒に対し、口頭で注意したが聞かなかったため、持っていたボールペンを投げつけ、生徒に当てる。
・ 部活動顧問の指示に従わず、ユニフォームの片づけが不十分であったため、当該生徒の頬を殴打する。

「頬をつねって席につかせる」のは体罰なんだそうだ(「個別の事案が体罰に該当するか等を判断するに当たっては、本通知2(1)の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある」とお役所文学的逃走経路確保表現がちゃんとついているけれど)。
 なるほど。ということは、「体育の授業中、給食を平手で叩(たた)くが席につかないため、生爪を一枚一枚剥がした」というのは体罰に当たらないのだな。などというのはもちろん、言いがかりである。つまんなかったですかね。

 それにしても、体罰が話題となるとすかさず中央官庁からこのような通知が教育委員会および都道府県知事方面に発せられる、という仕組みは、体罰を受ける生徒とは別のレベルでオソロシイ気がする。