漫画とアニメは違う

 おれは日本のアニメが嫌いで、ほとんど見ることがない。二十代の頃はそれでも宮崎駿のアニメを見たりしていたが、あるとき、大仰でわざとらしい演出に嫌気がさして、それ以来見ていない。宮崎駿に限らず、日本のアニメは演出が大仰であざとく、全体に子供っぽく、声優のセリフまわしも変な癖や抑揚、わざとらしさがあって、好きになれない。

 漫画は好きでよく読む。売れた漫画の本の帯にはよく「アニメ化決定!」などと書いてあることがあり、不思議に思う。なぜ安易にアニメ化するのだろうか。

 まあ、話題になった漫画はアニメでも人気が出るだろう、という商売上の判断はわかる。しかし、もうひとつ、やたらとアニメ化される背景には、漫画とアニメは近いという誤解があるんじゃないかと思う。

 漫画とアニメは全然別物である。漫画は、たとえアシスタントを使うことがあっても、基本は漫画家個人の作品だ。コマ割りも、絵も、セリフも、ストーリーの流れも、漫画家の創作物である。今、細かく分解して書いたけれども、コマ割り、絵、セリフ、ストーリーの流れが渾然一体となって構想され、実現されていく。

 一方で、アニメは集団の創作物である。監督がいるにしても、作画担当が複数いて、シナリオライターがいて、編集係がいて、声優がいる。音楽担当もいる。

 漫画とアニメは、いわば、小説と映画くらい違うものだと思う。

 しかるに、なぜ漫画とアニメが近いものに思われているかというと、おそらく、「絵を似せられる」という一点のせいだろう。これが誤解のもとだと思う(もちろん、似せられるというだけで、全然別物である)。正確には「構図を似せられる」だけだ。

 漫画と、それを原作にした実写作品は全然別物として捉えられるだろう。しかし、漫画とそのアニメ化作品は同類のように捉えられてしまう。漫画家に失礼だとおれは思う。