サムライ

 いきなりだが、おれの好きなサムライ。サタデイ・ナイト・ライブのジョン・ベルーシだ。

 自分をサムライに擬している人を見ると、なんだかなー、とおれはモヤモヤする。ある意味、ジョン・ベルーシ扮するsamuraiと大して変わらんのじゃないかと思う。

 映画や小説、お芝居、講談で描かれるカッコいいサムライは、実のところ、ほとんどいなかったろうと思う。率直に言えば、戦国時代の武士(武者と書くべきか)は領民支配と、戦闘における傷害・殺人を生業とする暴力関係者であるし、江戸時代に入れば、官僚か、家柄と虚栄にしがみつく奇食者、あるいはその両方である。鞍馬天狗も、志村喬演ずる島田勘兵衛も残念ながら実在しない。

 サッカーのワールドカップや、オリンピックの時期になるとサムライの株価が上がる。ああいうのはイメージの純化と拡大再生産とでもいうようなもので、実体がないからまあ、バブルである。

 もっとも、蛇も龍に憧れて、真似しているうちに角が生え、髭が生え、爪の生えた脚が生えてきて、そのうち本当に雲に昇るというのなら、それはそれで結構だけれども。