スットコドッコイ

 Twitterにも書いたのだが、おれは江戸弁の罵倒語の中で「スットコドッコイ」と「ヘチマ野郎」という表現が好きだ。「このスットコドッコイ!」というスットコでドッコイな音にはたまらないものがあるし、「このヘチマ野郎!」という理不尽な断定も素晴らしい。

 スットコドッコイについては、響きもさることながら、リズムがよい。八分音符+十六分音符+十六分音符が続くマーチの基本形のリズムである。

 最近のヘビメタは知らないが、おれがまだ熱き血潮の高校生だった頃のアイアン・メイデンだの何だのというヘビメタ・バンドもよくこういうリズムのリフを、脱穀機のごとき律儀さで刻んでいた。あれは「スットコドッコイ」をヘッドバンギングしながら表現していたのだと想像してみると、妙に可笑しい。

「おっちょこちょい」もタッタカターというリズムがなかなかよいが(西川のりおのツッタカターと同じリズムである)、やはりスットコドッコイの美味しいリズムにはかなわない。鯔背なような間抜けなような素敵な表現である。こういう音の感覚は気短で少々乱暴な江戸の職人言葉の特長で、関西弁にはちょっとないと思う(もちろん、関西弁には関西弁独特の素敵な響きの言葉がある)。なぜある言葉の響きを江戸的だ、上方的だと感じるのか、その仕組みはちょっと不思議でもある。