桃太郎の謎

「桃太郎」はおそらく、日本の民話の中で最もメジャーなお話だろうが、考えると、不思議なことだらけである。

 もちろん、桃太郎が桃から生まれるというのがまず不思議だが(あの桃は母親なんではなかろうか。だとすると、包丁を入れたおばあさんは大変に残酷なことをしでかしたわけだ)、そこはまあ、おとぎ話として笑って見逃してもよい。

 わたしがよくわからんのは、犬、猿、キジのモチベーションである。キビダンゴをくれるからといって、ホイホイ鬼ヶ島へついていくというのは、あまりに軽率というか、物を考えていないんじゃなかろうか。そこが畜生のあさましさ、なのかもしれないが。

 ま、しかし、それも大目に見よう。さらに不思議なのは、犬、猿、キジの戦闘能力である。犬、猿、キジ――なかんずくキジにやっつけられる鬼って、鬼としてどうよ、と思うのである。子供用の絵本にはキジにつつかれて逃げまどう鬼、なんていう絵がよく載っている。逆に言うと、そんな弱い鬼を退治しにいって、桃太郎はいばれるのだろうか。