イマジンとの対話

 ご承知の通り、人や何かを蹴落としたり、引きずり下ろしたりすると、暗い喜びを味わえる。今日はジョン・レノンの「Imagine」を引きずり下ろしてみようと思う。


 これまでにも何度か引きずり下ろしたことがあるが、今回は訳詞と対話する形で引きずり下ろしてみたい。


Imagine:天国なんてないと想像してご覧。
イナモト:そりゃ悪くないね。
Imagine:やってみれば簡単だよ。
イナモト:まあ、そうだね。
Imagine:僕達の下に地獄なんてないさ。上に空が広がっているだけだ。
イナモト:可能性はある。
Imagine:全ての人が今日のために生きていると想像してご覧。
イナモト:明日のための食料を作らなくなるよ。たぶん。


Imagine:国なんてないと想像してご覧。
イナモト:移民で大変なことになるね。差別も凄いことになるだろう。
Imagine:そう難しくはないはずさ。
イナモト:救急車も来なくなる。
Imagine:何かのために殺すとか死ぬとかもない。
イナモト:悪いけど、人間、そこまでリッパではいられないだろう。
Imagine:宗教もない。
イナモト:それはあなたの傲慢でしょう。
Imagine:全ての人が平和に生きていると想像してご覧。
イナモト:世の中、ハイジの村とは違うからなあ。


Imagine:君は僕を夢想家と言うかもしれない。
イナモト:都合のいいところしか考えない夢想家だと思う。
Imagine:でも、僕ひとりじゃないんだ。
イナモト:他にもいるのか!
Imagine:いつか君も僕達に加わってくれるといいけど。
イナモト:せっかくだけど、やめておく。
Imagine:そして世界はひとつになるだろう。
イナモト:人間を人間でなくせばね。


Imagine:所有なんてないと想像してご覧。
イナモト:それは困る。
Imagine:できるかな。
イナモト:想像はできるけど、だいぶひどいことになるだろう。
Imagine:貪欲も飢えもない。
イナモト:人間が植物化すれば、あるいは。
Imagine:人間は兄弟のようなものだ。
イナモト:他人のはじまりだし。
Imagine:全ての人が世界を分かち合っていると想像してご覧。
イナモト:洗脳か粛清が必要だと思うけど、それって幸せなことなのかな。


Imagine:君は僕を夢想家と言うかもしれない。
イナモト:間違いなく、そうだ。
Imagine:でも、僕ひとりじゃないんだ。
イナモト:それは弱った。
Imagine:いつか君も僕達に加わってくれるといいけど。
イナモト:あのさあ、お互いの不都合を、うまくやり過ごせる方法を考えたほうがいいと思うんだけどな。
Imagine:そして世界はひとつになるだろう。
イナモト:人間を人間でなくせばね。


 珍しく真面目に書いた。もちろん、引きずり下ろす暗い喜びを感じながらであるけれども。

                  • -


「今日の嘘八百」


嘘五百八十四 「Imagine」はガス抜きの機能を果たしているという点で、よくできた曲である。