放送禁止用語をどう考える

 差別用語の話の続き。シモネタになるだろうから、その手の話の嫌いな方はご勘弁。


 放送禁止用語というのがあって、各テレビ局が内規として定めているようだ。おそらく、リストになっていて、言い換える言葉や「→使用不可」なんていうのが対になっているのだろう。


 そのリストが表に出ることはまずない。それはそうだ。差別用語とシモの言葉のオンパレードだから、テレビ局としては、なるべく隠したい部分である。


 しかし、それらの言葉、本当に放送禁止にすべきなのかどうか。
 実際は、曖昧なうちに、何となくの流れや多少の抗議の電話か何かで、放送禁止に追いやられた言葉が多いだろうと思う。


 数年前、NHKが不祥事を立て続けに起こしたとき――正確を期すると、立て続けにバレたとき、公開の討論会みたいなことをやった。ああいうのを、放送禁止用語についてもやるといい。


 なぜなら、第四の権力と言われるマスメディアは不断の自浄作用が求められる存在だからである――というのはもちろんウソで、タブーを破ると、笑いを呼ぶからである(怒りも呼ぶ)。


(テーマミュージック)
「NKHスペシャル 徹底討論 放送禁止用語をどう考える」


アナウンサー:では、さっそく参りましょう。最初の言葉は――。


「お○ん○」


アナウンサー:えー、いきなりで、その、私の口からは申し上げられない言葉なのですが……。
学者:これはいいね。
アナウンサー:いいですか。
学者:いい。とてもいい。私は毎日してます。妻と。
アナウンサー:奥様と毎日。いや、お元気で。
学者:二十代の頃からずっとね。母の命日と終戦の日を除いて、毎日。
女優:私も好きです。
アナウンサー:はあ、お好きで。
女優:美容にもいいですし。
アナウンサー:まあ、そういう話はうかがいますけれども。
女優:仕事柄、時間が不規則になりがちでしょう。だから、必ず朝することにしてます。
評論家:夜ではなくて?
女優:夜は仕事で疲れていることが多いし、それにやっぱり、朝早くのほうが気持ちいいですよ。ご近所がまだ眠っていらっしゃるくらいの時間に。
学者:そう、するなら、朝だね。
評論家:そうですか、私はあの、しょっちゅうというわけではないですが、夜でないと、ちょっと……。
女優:でも、夜だと怪しまれるでしょう。ご近所に。
評論家:いや、あの、こっそりと。
女優:こっそりはかえって怪しまれますよ。
評論家:怪しまれますか。
女優:ええ。特に暗い夜道を歩いている女性が困ります。夜するなら、なるべく明るいところで堂々としたほうがいいですよ。
評論家:明るいところで堂々と。
学者:そう、堂々とすべきだね。別に、いけないことしているわけじゃないんだし。
評論家:まあ、そうかもしれませんが……。
アナウンサー:すみません、すみません。ここでは朝か夜かという話をしたいわけではありませんで、放送としてですね、この言葉を――。
評論家:あ。もしかして。
学者女優:?
評論家:「おさんぼ」と間違えてるんじゃないですか。

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アナウンサー:では、次の言葉に参りましょう。


「○んぼ」


女優:(顔を赤らめる)
評論家:これはねえ、ちゃんと他の言い方が浸透しているから、あえて口にすることはないと思うんですけどねえ。
学者:そう、呼び方はいろいろあるね。例えば――。
女優:せ、先生、やめておかれたほうが。
学者:ん? そうか? まあ、この言葉自体は放送で使う必要はあまりないと思うんだが、問題は熟語だね。
アナウンサー:ははあ、熟語。
学者:うん。
アナウンサー:あ、口にはなさらないで。
学者:大丈夫だ。例えば、ンんぼ桟敷、とかだね。ああいうのまで、禁止せにゃならんのかな。
評論家:それは言えますね。他の例だと、ンくら縞とか。あまり厳密にしすぎると、日本語文化の破壊につながる恐れがありますね。ンんぼ桟敷という言い方をするときは、特に差別意識はないし、差別を助長するとも思えないんですがね。
女優:そんな桟敷があるんですか。
評論家:ええ。座らされるんです。
女優:(赤くなる)
学者:大学の中でもよく座らされる人がいるよ。ワッハッハ。女性の若い学者なんかが、よく嫌がらせでやられるんだ。
女優:(真っ赤になる)
評論家:あれ、なんで赤くなってるんです?
女優:は? え?
アナウンサー:失礼ですが、また勘違いなさっているのでは?
女優:ちんぼ、じゃないんですか?
全員:言っちゃったよー!


 ちなみに、岩波書店広辞苑(第五版、新村 出編)で「ちんぽ」を引くと、こうあった。


ちん-ぽ幼児語)陰茎。ちんこ。ちんぽこ。

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「今日の嘘八百」


嘘五百七十三 犬が犬食いしていた。犬死にした。