自慢になることではないが、わたしは随分と酒が好きだ。


 もっとも、味にはさほど興味がなくて、まあ、あまり甘口の日本酒なんかは苦手だけれども、酒の種類や銘柄にこだわりはない。


 正確には、酒が好きというより、ヨッパラって、ふわーっと楽な心持ちになっているのが好きであるらしい。


 病院の点滴にアルコールを混ぜると、ヨッパラえるのだろうか。もしそうなら、将来、寝たきり老人になったとき、ぜひ混ぜてもらいたいと思う。


 以前は毎晩、飲んでいたけれども、最近はなるべく週三日は飲まないようにしている。


 肝臓をいたわってのことなのだが、長生きしたいからではない。
 酒が元で死ぬのは、まあ、それはそれでしょうがないように思う。嫌なのは、肝臓がダメになって全く飲めなくなる、あるいは飲むと気持ちが悪くなる、という状態で、これがコワい。


 死ぬまで飲んでいたい、ヨッパラっていい心持ちになりたいと、心から思う。いやもう、ホント、まったく、いやはや、切実に。


 酒飲みというのは、どのくらい遺伝するものなのだろうか。


 わたしの両親はどちらも酒が好きで、父親のほうは七十を過ぎたが、若い頃から今まで飲まなかった日がほとんどないらしい。
 母親によると、熱を出そうが腹をこわしていようが、何が何でも飲むんだそうで、まるで決死隊である。


 そう話す母親だって、この間、たまたま東京に来たとき、一日、付き合ったが、昼、ビールを大ジョッキでぐいっとやり、夜は夜で、また大ジョッキをぐいっ、ぐいっとやっていたから、いやはや、かなわない。


 父母がそんなふうだから、わたしはもう、助からないものだと諦めている。


 因縁なのだ。おれが悪いわけじゃない。違うか。

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「今日の嘘八百」


嘘五百二十六 酒は百薬の長、なるほど副作用の長でもある。