赤塚不二夫の見る夢

 たまに天才バカボンを読むことがあるのだが、いやはや、その度に赤塚不二夫の天才ぶりに呆れる。


 笑いには、その時代にしか通じない笑いと、時代を突き抜けて通じる笑いがあると思うが、赤塚不二夫のギャグは後者だろう。今でも笑い、そして驚いてしまう。


 凄くて、どうやってそう凄くなったんだか凡人には理解できない人物を天才と呼ぶ。
 たまに広告なんかで「天才教育」という言葉を見かけるけれども、ノウハウで作り出せるもののどこが天才なものか。


 ンなことはどうでもいいですね、ハイハイ。赤塚不二夫を前にして、ヤボチンスキーでした。


 赤塚不二夫は1935年、満州の生まれ。今年、72歳である。


 お釈迦様は生まれた直後に東西南北に七歩歩き、天と地を指さして「天上天下唯我独尊」とのたまった。
 赤塚不二夫は生まれた直後に東西南北に七歩歩き、天と地を指さして「これでいいのだ!」と宣言した。


 その瞬間、世界は全肯定されたのである。


 ――というのは、わたしの気に入っているギャグである。これでいいのだ。国会で青島幸男が決めたのだ。


 その赤塚不二夫だが、脳内出血で倒れ、2004年からはこんこんと眠り続けているという。


 弟子達によりフジオ・プロダクションは活動を続けているが、赤塚不二夫が倒れてから社長を務めていた妻の赤塚眞知子さんは、2006年にクモ膜下出血で亡くなった。


 赤塚眞知子さんのブログの最後に、フジオ・プロダクションにより亡くなった旨が記されている。


マチ子さんの看護師・社長・小姑・ママ母・料理人・小悪魔…そして妻、日記 - ありがとうございました。


 亡くなる少し前まで、ブログを、どうやら口述筆記で書いていらっしゃったようだ。


マチ子さんの看護師・社長・小姑・ママ母・料理人・小悪魔…そして妻、日記 - 告白します。


 亡くなった方のブログというのは、そこにその人がまだいるような気配がして、不思議な感じがする。ちょっと泣きそうになった。


 赤塚不二夫はこんこんと眠りながら、どんな夢を見ているのだろうか。


 天才の見る夢だから、天才的な夢なのだろうか。


 お酒が好きな方らしいから、ヨッパラったような心持ちの、浮かれた夢であってほしい。その夢の中に入り込んでみたい、と思う。

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「今日の嘘八百」


嘘五百九十 堺すすむは生まれた直後に東西南北に七歩歩き、天と地を指さして「ナーンデカ?!」と言った。