かれこれ一週間以上風邪をひいていて、どうやらようやく直ってきた。


 といっても、大した風邪ではない。普通に仕事はしているし、出かけもする。
 頭がぼーっとしている気もするが、これは生まれたときからそうだったから、風邪のせいかどうかよくわからない。


 やたらと痰がからむのだけが困る。わざとゼーゼーやっては、カーッ、ペッとティッシュペーパーに痰を吐いている。


 バッチイ話で申し訳ないが、みなさんは、ティッシュペーパーに吐いた痰を見るだろうか。


 わたしは見る。必ず見る。


 そうして、黄色い大物だったり、半ば凝り固まったきっちりしたやつだと「お」と思う。その「お」の中には、少々のうれしさが混じっている。
 透明だと、「なんだ……」とがっかりするんだから、自分でもどうもよくわからない。


 自分の体が病いに対してちゃんと反応している、抵抗している、ということを確認したいのだろうか。
 あるいは、耳掃除をして、思いもかけない耳くその大物が採れるとうれしいのと同じような心理なのか。


 あれだって、一塊の耳くそに、人体の不思議と三十ウン億年にわたる生物進化の歴史を見ている、と言えないこともない。


 痰がからんでいて困るのは、飯を食ったり、水を飲んだりするときだ。
 飯や水に押される形で、痰も一緒に胃に落っこちているところを想像すると、あまりいい気がしない。


 同じ身の内なのに、変なものだ。胃腸に風邪が回るような気がするからだろうか。


 ともあれ、我が白血球武士団の奮戦もあって、どうやら今回は勝ち戦と見えてきた。
 何しろ、この白血球の猛者ども、ハナから捨て身だ。敵の風邪菌に抱きついては、カーッ、ペッでティッシュペーパーまで道連れにする。敵からすると始末に負えない輩だろう。


「おいごと刺せ!」。寺田屋の変みたいな輩である。ウム、ご苦労。

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「今日の嘘八百」


嘘四百七十四 新しく日本中年会議所というものを組織したが、職場の愚痴と上司の悪口と若手社員の駄目話しか出てこないという。