幽霊の

 生まれてこの方、幽霊を見たことがない。


 もっとも、それはこちらが幽霊を、足がなくてゆらゆら空中に浮いているもの、と決めてかかっているからそう思うのであって、意外と幽霊なんてのは普通の格好をして、そこいらを歩いているものなのかもしれない。


 案外、緑のおばさんと化して、横断歩道で旗を振っていたりして。それでは、まず気づかない。


 だいたい、人間、死んだ後のことなんて、まずわからないものである。
 わかっている、という人だって、たいていは、誰かがこう言っていたとか、物の本にこう書いてあった、というだけであって、本当のところはわからない。


 ま、いつも書くけれども、逝けばわかるさ、である。