キリンの激情

 喧嘩する2頭のキリン。



 例によってあまりに凄いものを見ると、笑ってしまう。


 こんな勢いで首をぶつけあって、大丈夫なのだろうか。


 キリンの頸骨骨折。そこはかとなく、悲しい。


 しかし、よくわからないのはずっと喧嘩し続けているわけではなく、むしろ寄り添ってゆらゆら歩いている時間のほうが長いことだ。
 仲よく(見える)歩いていて、突然、片方が首をガキッとぶつける。そうすると、もう一頭も「何だ、このヤロー!」(野郎か雌かわからんが)と首を巻きつけるようにぶつける。


 んー。じゃれているわけではないと思うが。


 何なのだろう。もしかして、キリンというのは馬鹿なのだろうか。


「あのよー、こないだ、ハラホレの丘に行ったじゃんよー」
「行った」
「楽しかったよな」
「楽しかった。そういえば、お前、あんとき、おれの足踏んだよな」


 ガキッ!
 ゴキッ!
 ボカスカッ!
 ボゴッ!


「やっぱ、ヒレハレ川の水はンマイよな」
「ンマイ」
「そういえば、あんとき、おれに泥水かけたよな」


 ドスッ!
 ベシッ!
 ボキッ!
 ボカッ! ボカッ!


「クゥちゃん、可愛いよな」
「すんげ、可愛い」
「おれ、実は告白しようかと思ってんだ」
「サイだけどな」


 ボゴッ!
 バゴボゴッ!
 ベギッ!
 ゴガゴガッ!


 などと、おしゃべりしながら、突然、激情が高まって、喧嘩するのだろうか。


 ガイドのオッサンらしき人が何か説明しているようなのだが、現地語(?)なのでよくわからない。


 真相を知るには、来世でキリンに生まれ変わるしかないのかもしれないが、あまりキリンには生まれ変わりたくないものである。

                  • -


「今日の嘘八百」


嘘五百六十 戦後、土葬から火葬に切り替わったのは「一応、トドメはさしておいたほうがよい」という考えからだそうである。