昨日、「煙草は効果が少ない割に禁断症状の重い麻薬だ」というようなことを書いた。
ま、例によって、あんまり深く考えずに書き飛ばしたわけだが、つと立ち止まってみると、ハテ、麻薬とは何であろうか。
ひとつには、然るべき法律で定められているものが麻薬だ、という考え方がある。
ある意味では、正しい。そういう考え方に乗っ取って暮らしていれば、あまり厚生労働省の人と顔を合わせずに済みそうだ。
しかし、それで済ましてしまっては男がすたるというものだ。
イナモト・ヨシノリ、痩せても枯れてもニッポン男児。ニッポン男児だが、痩せるわ枯れるわ。何か、萎えてきた。
麻薬というのは、たいてい、常習してからやめると、禁断症状に見舞われるようだ。中毒というやつである。
しかし、それだけで判断すると、我々は酸素中毒であり、炭水化物中毒であり、水中毒である、なんてことになる。
酸素なんて、1分も断つと、大変に苦しい思いをする。水も断つと苦しくなるが、大量に摂取すると腹を下して、危険だ。
恐るべきは炭水化物で、摂取しないと痩せ衰えて死んでしまう。禁断症状に見舞われ始めた頃に摂取すると、いつもに倍した快感があるらしい。
逆に、大量に摂ると、デブになる。おお、怖い、おお、怖い。
しかし、こういうものを麻薬とは言わんのよね。
広辞苑を引くと、こうあった。
ま-やく【麻薬・痲薬】麻酔作用を持ち、常用すると習慣性となって中毒症状を起す物質の総称。阿片・モルヒネ・コカインの類。麻酔剤として医療に使用するが、嗜好的濫用は大きな害があるので法律で規制。
ふーん。
別に広辞苑が必ず正しいということはないだろうが、ひとつの見識ではあろうと思う。
麻酔作用を持つ、ということは、覚醒剤の類は麻薬に含まれないのだろうか。
煙草は多少の覚醒作用があるらしいが、麻酔作用はないと思う。コーヒー(というか、カフェイン)も習慣性があるが、覚醒はしても麻酔作用はない。
では、酒はどうなのか。
麻酔作用は強いし、習慣性があり、中毒症状を起こす。医療云々を別にすれば、まさしく広辞苑の言う麻薬に当たる。
しかし、一般には麻薬とは呼ばれていない。
おそらく、酒は、オカミが「麻薬である」と言い出す遙か前に、人間社会にはびこってしまったのだろう。
また、オカミ――政治家や役人の中にも常用者がいて、なかなか禁止できなかったのだと思う。
酒は、効果は強いが(酩酊するわ、泣くわ、笑うわ、怒るわ、揺れるわ、からむわ、暴れるわ、眠るわ)、中毒症状が始まるまで比較的長い期間がある。逆に、ひそかに中毒が進行するから怖い、とも言える。
作るのも簡単だし、原価は安い。恐るべき麻薬である。
人間社会にがっちり食い込んでいるから、下手に強権で禁止しようとすると、アメリカの禁酒法時代のように、マフィアの収入源となってしまう。
実際、あれをやめさせるには、政府の力くらいでは上手くいかない。もっと凄みのあるもの――宗教か死の権威でも借りるほか、ないようだ。始末に負えない。
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「今日の嘘八百」
嘘五百五十九 酩酊するといえば、“正義”中毒の人もいますね。