回転客

 で、考えたのだが、いっそ、客のほうをベルトコンベアに載せて回す、という商売はできないか。


 いや、寿司のほうが台に乗っていて、そのまわりを客がぐるぐる運ばれる、というのは、面白いけど、燃費が無駄だ。コストがかかり、本末転倒である。


 食い物のほうではなく、客のほうを回す必然性というものが必要だろう(こんなことを考える時点で、すでに本末転倒なのだが)。


 例えば、社員食堂なんかで、客が各品目のコーナーを順番に歩き、気に入ったものを盆にとって、好みの定食に揃える、なんてところがある。現代風に“自分らしく”生きていけるわけだ。
 ああいうのなら、客をベルトコンベアで回す意味はある。燃費との兼ね合いはわからないけれども。


 燃費をカバーするなら、単価の高いものでやったほうがいいかもしれない。


(客が)回転フランス料理フルコース


 なんていうのはどうだろう。
 客はゆっくりと運ばれ、食前酒から始まって、オードブル、スープ、と回りながら食べていく。
 でもって、話か何かしていて、メインディッシュを取り逃したときの口惜しさ(文字通り)。食うにはもう一度回っていくのを待たなければならない。


 同じふうに考えるなら、


回転懐石料理


 というのもある。


 あるいは、


回転ヘルス


 なんていうのもあるのかもしらんが、その方面についてはウトいので、他の方に任せます。


 ああ、もっと凄いのを思いついた。


回転外科手術


 というもので、客は出術台ごとベルトコンベアで運ばれて、「着替え」→「麻酔」→「開腹」→「切除」→「縫合」と各コーナーを回るのだ。
 医者は医者で、毎日、毎日、開腹なら開腹、縫合なら縫合ばかりを繰り返すから、必然的に担当作業についての腕が上がる。病院のコストは下がる。


 でもって、最後は病室までベルトコンベアで運ばれるわけだが、時々、「安」の字だの「置」の字だのに枝分かれするときもあって、その先には坊主や焼き場が待っている。まあ、人生いろいろである。

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「今日の嘘八百」


嘘三百二 欲しい女はすぐに手に入れろ。次に回ってくるときはひからびている。


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