一人称

 いや、そんなことを書こうと思っていたのではなかった。


 日本語には、非常に多くの一人称がある。思いつくままに挙げていこう。


私(わたし、わたくし)、僕、俺、わし、我、小生、あたし、あたくし、あっし、おいら、あたい、拙者、手前、身ども、それがし、おら、朕、余、麿、吾輩、やつがれ


 まだまだあるだろう。


 こうした一人称の多さを例に挙げて、「日本語とは何と豊かな言語なのでしょう!」と日本語バンザイ論を展開する手合いもいる。
 しかし、それぞれの言語には別種の豊かさがあるのであって、鏡を見ながらニヤニヤしている姿は、ハタから見ていてみっともない。


 それはともかく(自分で書き出しておいて、それはともかく、もないもんだが)、わたしが書いているようなブログでは、一人称を何にするか、というのは、案外、大きな問題だ。
 何を選ぶかによって、文章の印象が大きく変わるからである。


 例えば、


私はラーメンが好きだ。


 という文章があったとして、


俺はラーメンが好きだ。


僕はラーメンが好きだ。


 では、受け取る感覚がだいぶ違う。


 さらに、


オレはラーメンが好きだ。


ぼくはラーメンが好きだ。


ボクはラーメンが好きだ。


 と、ひらがな、カタカナに表記を変えると、また違ったニュアンスになる。


 それぞれ、一長一短があるというか、二長一短だったり、一長二短だったり、二十八長五千三百六十二短だったりして、なかなか、コレ、という一人称を見つけるのは難しい。