殺伐の一歩手前

 大相撲は元々、格闘だから、格闘路線というのも変な言い方だけれども、相撲のいろいろとゆるい部分(反面、それが大相撲のおおらかなよさだったのだが)を締めていった、という意味だ。
 横綱を安易に出さないのは、そのせいもあるのだろう。


 今の大相撲に、昔はあった(という)相手への「はなむけ」的感覚はなさそうだ。
 力士がガッツンガツンにぶつかるので、気迫がある。殺伐とする一歩手前、取り組みによっては、殺伐そのものになる。


 一方で、力士が大型化・パワー化しているうえ、力士の気も立っていて、怪我も多い。


 昔は、今ほどサポーターやテーピングをしている力士はいなかった。
「それは今の力士がたるんでいるからだ」などと片づけるのは、言うほうは一時の快感があるだろうが、力士に失礼だと思う。昔とは状況が全然変わっている。


 相撲人気が回復してきているのかどうかは、手元に入場者数や視聴率のデータがないのでわからないが、少なくとも見ていて面白い。
 格闘路線は、今のところ、いい方向に行っているのではないか。


 ただし、怪我により有望力士が引退に追い込まれる、あるいは本来の資質を活かせない、としたら、もったいない話だ。
 もしかしたら、怪我の続出が一因となって、大相撲自体がダメになる可能性だってある。
 例えば、今、朝青龍が引退したらどうなるだろうか。


 どうすればいいのか、わたしに画期的な案なぞ、もちろん、ない。
 日本相撲協会は、予防医学の見地から専門家によるプロジェクトチームを作ったら、と、そのくらいしか、思いつかない。