音楽の状況

 スーパーで買い物をしていて、BGMに「ロッキーのテーマ」がかかっていることに気づいた。


 ♪パーパパ、パーパパ、パーパーパ、と、例のファンファーレが鳴り、後半にはちゃんと女声コーラスが入っている。原曲らしい。


 買い物している主婦のミナサンの闘志を掻き立てて、挽肉300gで済むところを、攻撃的に100g余計に買わせようという魂胆なのだろうか――反射的にシャドウボクシングしてしまいながら、そんなことを考えた。
 店員に、支配人室へ連れていかれた。


 昔、ウォークマンのCMだったか、「君は音楽のある星に生まれてきたんだよ」だかなんだか、そんなコピーがあったと思う。


 確かに、音楽のある星だ。
 スーパーには「ロッキーのテーマ」が鳴り響き、蕎麦屋に行けば、琴が「イエスタデイ」を奏でている。


 あの蕎麦屋の琴というのも、わかったようなわからないような、音楽を馬鹿にしているような本人達が馬鹿なような、だ。


 蕎麦屋と言っても、サラリーマンがさっさと昼食を済ませるために行くような、にぎやかな店に琴はかからない。
 静かな、中の下くらいの店、わたしの長年の観察では鶏せいろが千円程度、鴨せいろが千二百円以上の店でよくかかる。


 日本情緒の演出、ということなのだろうが、蕎麦というのは元々、琴を聞きながら食うものだったのだろうか? しかも、曲が「イエスタデイ」である。


 もっとも、蕎麦屋に景気よく「ロッキーのテーマ」が鳴り響いても、困るが。


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「今日の嘘八百」


嘘百三十七 本当は、蕎麦屋の裏でお嬢さんが「イエスタデイ」を実演しているのだ。